他のダーウィノプテルスとまったく違う⁈
今回発見されたダーウィノプテルス属の新種は、中国科学院 古脊椎動物・古人類学研究所(IVPP)に保管されていた標本の中に隠されていました。
化石は灰緑色の頁岩(けつがん)の中に埋まっており、チームが新たに詳しく調べたところ、頭骨、頸椎、肩、翼、後肢など、ほぼ完全な全身の骨格が保存されていたのです。
その全身骨格から翼開長は約75センチと推定されています。

また観察の結果、この個体には以下のような特異な特徴が見られました。
・とさか(前上顎稜)の背側縁が直線的で、側面が滑らか
・上顎に18本、下顎に14本の歯を持つ(ダーウィノプテルス属の他種より多い)
・翼指の第4節骨が第1節骨よりも短い(他種では同等の長さ以上)
さらに歯の形は小さな円錐形で中央がふくらみ、根元から先端にかけて色が濃くなるという、独特な構造をしていました。
以上のような特徴から、この化石標本はダーウィノプテルス属の新種であることが判明し、新たに「ダーウィノプテルス・カンポシ(Darwinopterus camposi)」と命名されています。

それから特に注目されたのが、頭部の骨の一部が癒合しておらず、それに対して翼の骨が完全に癒合していた点です。
通常、成体になると骨と骨のつなぎ目(縫合線)は消えて一体化します。
ところがこの個体では、頭部の骨(前上顎骨と前頭骨など)が癒合しておらず、これは“まだ成長途中”であることを示しているようにも見えます。
しかし同時に、肩甲骨と烏口骨がしっかりと癒合していたり、翼の骨の一部が完全に接合していたりすることから、すでに“成体”だったことも示唆されました。
このことから、翼竜においては骨の癒合が部位によって異なるタイミングで進行し、大人になってからも癒合が続く場合もあることが示されています。
この事実は、これまで信じられてきた「頭部の骨は大人になる前の早い段階で癒合する」という説に対し、大きな再考を促すものです。
今回発見されたダーウィノプテルス・カンポシは、翼竜の成長や進化について新たな視点を提供する貴重な化石となります。
この先、より多くの標本を調査し、骨の癒合のタイミングや順序を解明することで、翼竜の生活史や進化戦略がより明らかになるでしょう。