雷に打たれることが恩恵になる木が存在する
雷に打たれることが恩恵になる木が存在する / Credit:clip studio . 川勝康弘
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雷に打たれることが恩恵になる木が存在する (2/3)

2025.04.02 21:00:10 Wednesday

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雷が「ご褒美」になる木の謎

雷に打たれると元気になる木が存在する
雷に打たれると元気になる木が存在する / Credit:Canva

研究チームが最初に導入したのは、雷がどの樹木を直撃したかを迅速かつ正確に割り出す“落雷追跡システム”です。

雷が走る際に放出されるかすかな電磁波を複数地点で検出し、信号到達のタイムラグを三角測量する手法によって、落雷地点をほぼリアルタイムで特定できます。

従来は焦げ跡や地上の被害状況から推定するしかなく、隣の木に伝播した電流との区別が曖昧になりがちでしたが、こうした高精度なシステムにより「どこに雷が落ちたのか」を確実に把握できるようになりました。

システムが示す地点にはすぐに調査隊が向かい、ドローンを飛ばして上空から木々の状態を撮影します。

背の高い密林を人力でかき分けるよりはるかに効率的で、真上からの映像によって折れた枝や枯死範囲が一目瞭然です。

とりわけ、中心となった木の幹や樹冠、周囲の林床に至るまで、どこがどんなダメージを受けているかを瞬時に俯瞰できる点が新しいアプローチだといえます。

状況によっては実際に木に登って幹や枝の状態を詳しく観察しますが、まずはドローンが“現行犯逮捕”のように落雷の影響を捕捉するため、無駄がありません。

こうして一定期間調査すると、93本の木が雷に直撃していたことが判明し、そのうち約56%は最終的に枯死してしまいました。

しかし、なかには驚くほど被害の少ない木があり、とくに大型樹として知られる「エボエ(Dipteryx oleifera)」は10個体すべてが致命的ダメージを逃れたのです。

平均して8%程度の枝枯れ(crown die-back)は見られたものの、いずれも大きく衰えることなく生き延びたことが確認されました。

しかも雷の電流が周囲の樹木やツル植物に波及し、それらが次々と枯死するケースが複数回目撃され、エボエ(Dipteryx oleifera) 本体は“ほぼ無傷”のまま日の光や生育空間を独り占めするような状況になっていたのです。

調べていくうち、同じ雷が巻き添えで枯らすツル植物の多く(約78%)がこの木から離れ、結果的に負担が大幅に減るという事例もわかりました。

ツルは木の成長を妨げることで知られますが、電流の通り道として優先的に被害を受け、エボエ(Dipteryx oleifera) はむしろ身軽になるわけです。

さらに、大径の個体ほど生涯で平均5回ほど落雷を受けると推計されており、その都度ライバルを減らせば、寿命と繁殖機会が大幅に伸びる可能性が浮上してきます。

実際、研究チームの数理モデルでは、この耐雷性が寿命や種子生産量(fecundity)を最大で14倍程度に増やすシナリオが試算されました。

このように大規模かつ詳細な調査によって、研究者たちは「一見危険な落雷が特定の樹木には大きなアドバンテージをもたらす」という仮説を裏づける証拠を示しました。

雷による死者数や破壊力だけでなく、「雷を得意とする木が存在し、生態系の競争バランスを塗り替え得る」という新しい視点を、定量的なデータと映像から見いだした点に大きな意義があります。

また、Dipteryx oleifera 以外にも少数ながら生き延びた大型樹が認められたことも、同様の戦略を持つ種が他にもいる可能性を示唆しています。

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