雷に打たれた木が元気になる? 非常識を覆す発見

昔から落雷は「森にとっての大災害」であり、山火事や台風と並ぶ主要な破壊要因と考えられてきました。
それもそのはず、実際に世界中の森林では毎年数多くの木が雷に打たれて命を落としています。
「雷=厄介な天敵」というイメージは、私たちが子どもの頃から抱いてきたごく自然な理解といえるでしょう。
ところが、歴史をさかのぼると、18世紀末のヨーロッパではすでに「雷が直撃した大木がなぜか生き延びていた」という報告があり、20世紀初頭のアフリカや北米でも似たような逸話が多く見受けられます。
単なる“運の良い木”かと思いきや、「毎年のように雷を受けながら、むしろ枝ぶりを広げている」「枯れるどころか周囲の木がなぎ倒され、結果的にその大木だけが日光を独占している」など、まるで雷を“自分に都合よく利用している”かのような話が各地で伝わってきました。
一部の研究者はこの現象に注目し、「たまたま雷に耐えただけではなく、実は雷がその樹木にとって有利に働いているのではないか」と考え始めます。
落雷といえば森をかき乱す“破壊神”というイメージですが、同じ雷が特定の木にとっては“味方”になり得るとしたら、実に奇妙な仮説です。
これまで雷の影響を正確に把握することは難しく、「雷によって死んだ木」の記録が中心でした。
しかし近年、雷が落ちる瞬間に出る電磁波を分析して落雷地点を高精度で特定し、さらにドローンを使って上空から生存状況を確認する技術が実用化され、どの木が雷を受けてどうなったのかを詳細に追跡できるようになりました。
すると、周辺のライバル樹木やツル植物が次々と枯れていく中、中心の木だけは驚くほど軽微なダメージで生き延びている事例が数多く見つかったのです。
研究者たちはますます「雷の正体はただの破壊者ではなく、森林内の競争関係を大きく変える力を秘めているのではないか」と強く関心を抱くようになりました。
特に近年では「より高い樹木ほど雷に打たれるリスクは大きいが、そのぶん周囲のライバルが一斉に排除され、結果的に自身の生存や繁殖が有利になるかもしれない」という仮説も提起されています。
一見、降りかかる“災難”にしか思えない雷が、一部の木にとっては“ありがたい潤滑油”のように機能している可能性があるわけです。もちろん、単なる逸話や偶然の例ではなく、長期間にわたる系統的な観察データが必要であり、さらにメカニズムや他種との違いも解き明かさなくてはなりません。
そこで今回研究者たちは、パナマの熱帯雨林において雷がいつ、どの木を直撃し、打たれた木がその後どう成長して種子を残すのかを徹底的に追跡する、前例のない大規模調査を始めたのです。