雷が選ぶ勝ち組と負け組:あなたの知らない森林の競争

今回の発見は、長らく「雷は森を破壊するだけ」と思われてきた常識を大きく揺るがすものでしょう。
もともと雷といえば、容赦なく幹や枝を裂き、周囲の樹木を巻き添えに大量に枯らす“天災”として恐れられてきました。しかし今回の結果からは、「そうした破壊力が、耐雷性を備えた木にとってはむしろ恩恵に変わる」という意外な一面が浮かび上がっています。
特に Dipteryx oleifera のように立て続けに落雷を受けても大ダメージなく生き延びる巨木は、“雷によって競合相手が排除され、日光や養分を独占する”という生存戦略をまるで獲得しているかのようです。
たとえば、大型の木ほど稲妻が落ちるリスクは高いのですが、その分周囲が電流のとばっちりで倒れれば、結果的に自分だけが高くそびえて日光を存分に浴びられる。まるでサバンナのライオンが他の捕食者を駆逐し、自分だけが自由に狩りを楽しむ構図のようにも見えます。
ライバルが減ることでより長く生き、多くの花や実をつけるチャンスが増し、それを何世代も繰り返すうちに“雷に強い大木だけが森を支配する”という状況が生まれる可能性もあるのです。
もしこの現象が他の森林や別の大陸でも起こっているとしたら、雷は森の命運を左右する大きなカギのひとつになります。いまのところ「破壊的」というイメージが強い雷ですが、耐雷性を持つ木を増やし、森の風景を激変させる要因にもなり得ます。
実際、気候変動によって将来的に落雷の頻度や規模が増すとの予測もあり、そうなれば Dipteryx oleifera のような耐雷樹がますます優位に立つかもしれません。逆に、雷に弱い種は大きく育つ前に雷で倒されることが頻発すれば、森林の構成が大きく変わるでしょう。
私たちはまだ、落雷が森の将来をどこまで変え得るのかを正確には知りません。
しかし本研究のように、電磁波による精密な測定とドローンを駆使した新手法で落雷を捉え続ければ、世界各地の森で「本当に雷に打たれるほどメリットがある木」がどの程度存在するのか、そしてそれがいかに生態系のバランスを塗り替えていくのかが、少しずつ明らかになっていくはずです。