なぜ今、“瞳の色”を変える手術が広がるのか?

瞳の色は生まれつきの個性の中でも特に印象深い要素の一つです。
「ブラウンの瞳をブルーに変えたい」「グリーンの瞳に憧れる」という思いを抱いてきた人々は少なくありません。
そうしたニーズに応える形で、2000年代には「虹彩インプラント」という方法が海外で一部行われていましたが、眼内に人工の虹彩(カラーディスク)を挿入するため、慢性的な炎症や緑内障、白内障などの重篤な合併症が多発し、医療界では「リスクが高い」との判断から推奨されなくなっています。
この反省を踏まえ、安全性と自然な仕上がりを追求する方法として登場したのが、角膜に色素を注入して瞳の色を変える「コスメティック・ケラトピグメンテーション」です。
具体的には角膜層にドーナツ状のチャネルを形成し、そこに色素を埋め込むことで“虹彩の上から着色する”というイメージになります。
角膜を扱うため侵襲が比較的少なく、施術は20分程度で完了し、痛みが軽度とされるのが特徴です。
ヨーロッパの一部クリニックで2010年代に開発され、2019年頃からアメリカで導入が進み、SNSを中心に話題が拡散されました。
そして2024年現在、両目で1万2000ドルという高額費用にもかかわらず、この手術を希望する人が急増しています。
しかし、角膜に対する操作である以上、視力低下や感染症などの合併症が懸念されるほか、色素の品質や成分が公表されていない事例もあるため、長期的な安全性を危ぶむ専門家も少なくありません。
そこで本記事では、角膜着色手術の実態と背景、過去に行われてきた虹彩インプラントとの比較を交えつつ、その利点と懸念点を多角的に検証します。
また、実際に手術を受けた患者の体験談や、研究者や医師が指摘するリスクとメリットを整理し、「自分の目」という重要な器官を守るための指針を提供したいと考えています。
目は非常にデリケートな器官であり、いったん障害が生じると日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
単に「瞳の色を変える」という美容的な狙いであっても、一歩間違えれば生涯にわたる視力障害に直結しかねません。
最先端技術として急速に人気が高まる角膜着色手術の実態とリスクを正しく理解し、今後の動向を見極めることは、今まさに多くの人々が求める情報だと言えるでしょう。