果たして“瞳の色”は買うべき?

このように、角膜着色手術は「目の色を永久的に変える」という長年のニーズに応える最先端の美容医療として急速に広がりつつあります。
SNSなどで拡散されるビフォーアフターの映像が「本来の虹彩色のような自然な仕上がり」と称賛され、コンタクトレンズ不要になる手軽さも魅力の一つです。
しかし、安全性に関する十分な長期データが揃っていないまま人気が高まっている状況に、多くの医師が懸念を示しています。
まず最大の課題は、長期的な視力への影響や角膜の健康リスクが不明瞭な点です。
LASIKと同様、角膜に直接施術を行う以上、エクタジアや感染症、金属成分によるトラブルなどの合併症リスクは通常のコンタクトレンズ使用とは別次元であることを理解しなければなりません。
また、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ておらず、医師の裁量による未承認医療行為として行われているため、万が一合併症が起きた際に患者が十分な救済を受けられるかは未知数です。
経済的な要因も大きなハードルになります。
両目で1万2000ドルもの高額費用に加え、トラブルが起きたときの再手術や治療費がさらにかかる可能性もあるのです。
決して安価とは言えないため、慎重な判断が求められます。
その一方で、研究が進むにつれ、施術手技や色素の改良が行われれば合併症率をさらに下げられる可能性もあります。
既に医療目的で実施されてきた角膜着色手術に関するデータはある程度蓄積されており、その知見が美容目的の技術にも応用されるかもしれません。
ただし、医療目的と美容目的とでは適応や手術手順が大きく異なるケースもあるため、やはり長期的・大規模な研究が不可欠です。
最終的に、この手術を受けるかどうかは個人の判断に委ねられます。
特に、長年カラーコンタクトレンズで悩みを抱えてきた人などにとっては大きな魅力と感じられるでしょう。
しかし、角膜や視力に影響が出たときに取り返しのつかない事態になり得ること、また日本を含め世界的に規制やガイドラインがまだ整備されていない現状を踏まえると、事前の情報収集や専門医への相談が不可欠です。
もしわずかでも不安があるならば、カラーコンタクトレンズのように取り外しができる代替手段も依然として有力な選択肢です。
高度な医療技術は私たちに新しい美の可能性をもたらす一方、未知の副作用や長期リスクと向き合う覚悟を求めるものでもあります。
角膜着色手術は、その恩恵とリスクを天秤にかけ、慎重に選択することが求められる「最新の美容医療」であると言えるでしょう。