目の色を変える1万2000ドルの手術が人気急上昇中
目の色を変える1万2000ドルの手術が人気急上昇中 / Credit:Canva
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目の色を変える1万2000ドルの手術が人気急上昇中 (2/3)

2025.04.11 22:00:42 Friday

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夢の瞳を手に入れる?注目急上昇の角膜着色手術

目の色を変える1万2000ドルの手術が人気急上昇中
目の色を変える1万2000ドルの手術が人気急上昇中 / Credit:Boxer Wachler Vision InCredit:

角膜着手術の有効性や安全性を示すため、いくつかの研究や臨床調査が行われています。

中でも2018年に欧州の研究者グループが公表した調査は、合計204名の患者を4か月から12年超にわたって追跡したことで注目を集めました。

調査によると、29名(全体の約14%)に何らかの合併症が確認され、そのうち49%が光に対する過敏症(強いまぶしさ)を訴え、19%で色素の退色・変色が早期に見られました。

さらに4%で視野の一部に違和感を訴え、2%の患者がMRI検査時に金属成分の影響と思われる痛みを経験しています。

一方、同じグループの一部が参加した2021年の追跡調査では、対象者こそ40名と限られていますが、合併症の発生率がやや低下したと報告されています。

これは施術技術や色素の改良が進んだ結果とみられますが、完全にリスクがなくなったわけではありません。

実際、2020年代に入ってから角膜の形状が変化して視力障害を引き起こす「角膜拡張症(エクタジア)」を発症した症例が少なくとも5例報告されており、角膜に負荷をかけるこの手法独自のリスクが改めて指摘されています。

こうした結果を受け、積極的に施術を行う医師たちは「合併症はごく稀で、適切な検査と患者選定を行えば安全性は高い」と反論しています。

特に、ロサンゼルスで数百件の手術を行っている医師や年間400件近い施術を行うとされる医師は、独自の高品質な色素を使用し、優れた術式を採用することで合併症を抑えられると主張しています。

ただし、色素の製造元や具体的な成分を公表していないケースが多く、「MRI検査時のトラブルを本当に回避できるのか」といった疑問も残るのが現状です。

また、アメリカ眼科学会(AAO)は2024年に「角膜着色手術はFDA(米国食品医薬品局)の承認を得ていない実験段階の医療行為であり、感染症や視力障害などの深刻なリスクがある」と再び警告を発しました。

これに反対する医師グループが「最新の研究成果を反映しておらず不適切だ」と撤回を求めていますが、AAO側は立場を変えていません。

多くの専門家は「10年から20年、あるいはそれ以上追跡した大規模データがなければ、安全性を断言するのは難しい」との見解を示しています。

医療目的で行われてきた角膜着色手術(先天的な虹彩欠損や外傷で生じた欠損補填など)も、何十年もの実績があるとはいえ大規模データは十分に揃っていません。

さらに、美容目的の場合、使用する色素や施術プロトコルが異なる場合があり、同列に評価できない点も多いとされています。

手術の費用や研究費用の問題、患者が地理的・時間的に長期追跡を受けにくい現状などが障壁となっているため、合併症や効果を大人数・長期間で検証するのは容易ではないのです。

こうしてみると、角膜着色手術はまだ道半ばと言えます。

比較的良好な経過をたどる患者が多いというデータはあるものの、角膜に根本的な操作を施す以上、視力障害や金属成分由来の合併症など、未知のリスクを完全に排除できていないのが現状です。

将来的にはより多くの症例と長期観察のデータが積み重なることで、真の安全性やリスクプロファイルが明らかになるかもしれません。

しかし、現段階では「未知の要素を多分にはらむ新技術」であることを忘れてはならないでしょう。

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