毎日の寄付で、うつ病は治るのか?

研究の背景には「他人のためにお金を使うことが幸福感を高める」という多くの先行研究があります。
しかしそうした研究のほとんどは、親切な行為やボランティアなど、人との直接的な社会交流を伴うものでした。
うつ病を抱える人々にとっては、こうした対人交流が負担となり、感情的な苦痛や疲労を高めて、逆効果になることが指摘されています。
そこで研究チームは今回、直接的な対人交流を必要としない「オンライン寄付」なら、うつ病の人々にも心理的な負担なく行えると考えました。
このアイデアを発案したのは、研究主任のツァン・ユヤン(Zhang Yuyang)氏です。
彼は次のように述べています。
「学部生の頃、私は公共サービスに情熱を注ぎ、ボランティア活動に取り組んだり、大学の農業資源を活用して農家の土壌問題を支援したりしていました」
その中で始めたのは、1日1元(約20円)を寄付する「毎日1元寄付プログラム」だといいます。
「大学院の心理学試験の準備期間中は非常にストレスが多かったのですが、寄付をすることで気分が高まることに気づきました。
これはいわゆる“温かい気持ち(ウォームグロー)”の効果かもしれません。
この気づきは、私が日常的に善行を行うようになるきっかけとなりました」
こうした経験をもとに、オンライン寄付がうつ病患者の症状を改善できるのではないかと考えたのです。