新しい周期表はプラズマ解析も宇宙観測も一気に扱える

今回提案された「新・周期表」がもたらす恩恵は、超精密な時間計測分野にとどまりません。
実は、整理された高電荷イオンのエネルギー状態一覧は、プラズマ物理や天体物理といった広い分野にも大きなインパクトを与えそうなのです。
私たちの身近な技術でいえば、核融合炉のような超高温のプラズマ環境があります。そこで扱われるプラズマ(イオンや電子が入り交じった状態)の中には、たくさんの高電荷イオンが存在するものの、そこから出る光やエネルギーの分析は複雑でした。
なぜなら、高電荷イオンは電子を多く失った結果、普通の原子とまったく違う“スペクトル”(出す光の波長)を示すため、どの線がどの元素に対応しているのか判別しにくかったのです。
しかし今回の新しい周期表を指針にすれば、「どの電子数系列に属しているか」を手掛かりに、複雑に見える光の輝線を素早く仕分けできるようになるかもしれません。
例えるならば、大きな倉庫に散らばっていた商品(スペクトル線)を、きちんとジャンルごとに並べ替えてラベリングし、どこに何があるか一目で見つかるようになったイメージです。
この恩恵はプラズマ研究だけにとどまりません。宇宙空間の星雲や銀河も、実は高温プラズマが豊富に存在する場所です。
望遠鏡で観測したときに、謎めいた光の線(スペクトル線)が見つかることがありますが、それがいったいどの元素由来なのか、あるいはどんなイオン状態なのか分からない場合が少なくありませんでした。
今回の研究による新・周期表を照合すれば、「これって実は電子数が○○のイオンなんじゃないか?」と推測しやすくなる可能性があります。
結果として、遠くの星や銀河の性質や進化の謎に迫る手がかりを得られるわけです。研究チームも、「実験室や天体プラズマで不可欠な高電荷イオンの構造を、一気にシンプルに見渡せるようになった」と述べています。
さらに注目すべきは、この新・周期表が私たちの暮らしにも大きな影響を与えうる点です。
冒頭でお話ししたように、高電荷イオンのある種のエネルギー遷移は、きわめて正確な「時計」になり得ます。
これによって、現在の最先端とされる光格子時計の精度をさらに高める道が開かれるかもしれません。
もし将来、その精度が桁違いに向上すれば、私たちが当たり前に使う「秒」という時間の単位自体が、まったく新しい定義に置き換わるかもしれないのです。
「原子核の陽子数」から「電子の数」へという大胆な発想の転換によって、プラズマ研究や天体観測、さらには究極の時間計測までもが大きく進化するかもしれません。
新しい周期表という視点が、これからの科学の歩みをさらに加速させていくでしょう。
既存の周期表ですら覚えられなかった私には新周期表はもちろん覚えることなぞできるはずもなく…。
長年使われていた並べ方を変えるだけで、新たな発見の糸口になる。
こういうのは大好きだ。
素数とかも並べ方とか表し方で何か出てきそうでワクワクする。