見た目・性格・思い出までフル改造した「AIの恋人」

今回の研究では、「AIポルノ」や「AI生成ポルノ」といった英語の検索語を用いて見つかったウェブサイトの中から、ユーザー自身が何らかの形でコンテンツ生成に関与できるサイト36件を選び出し、質的な内容分析が行われました。
調査対象のサイトはすべて英語で利用可能なサービスで、研究チームは各サイト上の説明文や案内を収集し、提供されている機能や生成手法、カスタマイズの項目などを体系的に分類・集計しました。
分析の結果、大半のサイトはユーザーに静止画の作成機能を提供しており、その割合は全体の約8割に上りました。
さらに約4割強のサイトでは動画の生成も可能であり、少数ながらアニメーションGIFや音声コンテンツ、VR(仮想現実)のシチュエーションに対応する例も見られました。
また注目すべきは、約44%のサイトで人工知能エージェントとの対話が導入されていたことです。
これはチャットボットやバーチャルパートナーと呼ばれるもので、ユーザーがAIキャラクターと会話したり、ロールプレイ的な交流を楽しんだりできる機能です。
コンテンツを生成する方法としては、主に項目選択式とテキスト入力式の二つに大別されました。
前者ではサイト側が用意した選択肢から、好みのキャラクターの特徴を一つずつ選んでいく形式です。
調査対象の97%ものサイトがこの方式を採用しており、例えばキャラクターの性別、年齢層、身体的特徴、衣服やシチュエーション(教室やオフィスなど)といった属性をメニューから指定できるようになっていました。
一方、約72%のサイトではプロンプトと呼ばれるテキスト入力にも対応しており、ユーザーが文章で細かな情景を説明することでAIがそれに沿ったコンテンツを生成します。
中にはプロンプトの書き方をサジェストしてくれる親切な仕組みを備えたサイトもあり、専門知識がなくても思い通りの画像や動画を作れる工夫が凝らされていました。
サイト上でカスタマイズ可能な範囲も非常に幅広いことが明らかになりました。
ベースとなるキャラクター像は人間だけでなく、アニメ風の二次元キャラやゲーム・映画の架空キャラクター風のものまで多彩に用意されており、ユーザーはほぼあらゆる外見上の要素を自分の好みに合わせて設定できます。
例えば身体のタイプ(グラマー、スリム等)、肌や髪の色、瞳の形、表情、衣装などの見た目から、照明の具合や天候・ロケーションといった背景のシチュエーションまで、細部にわたって自由に選択できるのです。
「使ってみて驚いたのは、どのプラットフォームも想像以上に簡単に操作でき、しかもカスタマイズの幅やリアルさが非常に高いことでした」とLapointe氏は語ります。
実際、あるサービスではユーザーが理想のエロティックな相手を一からデザインできるといいます。
そのAIキャラクターの「恋人」としての関係性の種類(例えば一夜限りの関係から長期交際まで)、趣味嗜好、性格、共有した思い出の設定、そして身体的特徴に至るまで作り込み、出来上がったパートナーとはまるで現実の恋人同士のように継続的でリアルな対話を楽しめるのです。
電話で会話することすら可能なその体験は、もはや従来の「鑑賞するポルノ」とは一線を画すものと言えるでしょう。
多くのAIポルノサイトは基本的な機能を無料で提供していますが、より高度なコンテンツを生成したい場合には課金が必要となるプレミアム機能を備えていることも分かりました。
また、一部のサイトでは現実の人物の写真をアップロードして裸にしたり(いわゆる「ヌード化」)、顔をすげ替えたりするコンテンツ改変系の機能も提供されていますが、そうした機能の利用にあたって本人の同意を確認する仕組みを導入していたサイトは36中たった1つしか存在しませんでした。
さらにユーザーコミュニティ的な側面も各所で見受けられ、投稿された画像・動画を他の利用者が閲覧したり、お気に入りやコメントで交流できるソーシャル機能を備えるプラットフォームも多くありました。
Lapointe氏は「AI生成ポルノのプラットフォームは、ユーザー自身に直感的なツールと低コストでハイパーリアルかつ双方向に没入できる画像・動画・音声・人工エージェントを作り出す力を与えることで、エロティックなコンテンツの制作と消費の在り方を塗り替えつつあります。
言わば、自分の幻想を文字通り“具現化”できる手段を提供しているのです」と指摘しています。