木材にナノ鉄を吸収させ、頑丈な新材料を作る
木材には、プラスチックにも金属にもない特有の良さがあります。
軽くて、加工しやすく、温もりがあって、何より再生可能な天然素材です。

もし、この木が「そのままの姿」で、鉄よりも強くなったら?
そんな夢のような素材づくりに挑戦したのが、FAUの研究チームでした。
彼らが注目したのは、「フェリハイドライト(ferrihydrite)」という鉄の酸化物です。
これは自然界の様々な場所に存在する無毒な鉱物で、酸化の進んだ土壌や河川や湖の中にあります。
そして、これは水酸化カリウムと硝酸鉄を混ぜることでナノサイズで生成できます。
研究者たちは、まずこのフェリハイドライトのナノ粒子を作成し、硬木の一種であるレッドオーク材に対して、真空含浸プロセスを用いることで、木の中に粒子を浸透させていきました。

レッドオークは「環孔材」と呼ばれる構造を持つ木材で、年輪に沿って大きな環状に導管が並んでおり、水や液体を吸い上げる力が強いのが特徴です。
この構造のおかげで、フェリハイドライトの粒子は木材の細胞壁の中にまで効率よく行き渡り、固定させることができました。
今回のプロセスの特徴は、木の構造を壊すことなく、あたかも木そのものがナノ鉄を取り込んだかのような形で、内側から「木を強化する」点にあります。
では、この方法で生まれた木は、いったいどんな性能を持っているのでしょうか?