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二酸化炭素を吸収・固定する建材を開発 / Credit:ETHZ_EurekAlert
science

【木のように生きる建物】CO2を吸収・貯蔵する「建築材料」を開発

2025.07.31 22:00:17 Thursday

歴史的に人は木を伐採し、無機質な建物を都市に増やしてきました。

しかし、それによって私たちは大気中の二酸化炭素(CO2)を増加させ、地球環境への負荷を高めてきたとも言えるでしょう。

そんな現代の課題に対し、チューリッヒ工科大学(ETHZ)が驚くべき研究成果を発表しました。

彼らが開発したのは、光合成を行いながらCO2を吸収・固定できる「生きた建築材料」です。

まるで植物のように“呼吸する”この素材は、未来の建築を根底から変える可能性を秘めています。

この研究成果は、2025年4月23日付の学術誌『Nature Communications』に掲載されました。

A building material that lives and stores carbon https://www.eurekalert.org/news-releases/1088213 scientists create living building material that stores carbon dioxide using growing bacteria https://www.designboom.com/technology/scientists-living-building-material-stores-carbon-dioxide-growing-bacteria-eth-zurich-06-21-2025/
Dual carbon sequestration with photosynthetic living materials https://doi.org/10.1038/s41467-025-58761-y

二酸化炭素を貯蔵する「生きた建材」とは?

建築と環境保全の両立は、近年大きな関心を集めています。

特に、建築業界が世界のCO2排出の大きな割合を占める中、構造物自体がCO2を吸収・貯蔵できる素材の開発は、持続可能な社会への鍵といえるでしょう。

ETHZの研究チームは、この課題に対して「生きた建築材料」という斬新なアプローチを試みました。

その中核にあるのが、シアノバクテリア(藍藻)という微生物です。

これは地球上で最も古い合成生物の一つで、水と光とCO2さえあれば、有機物(バイオマス)を生成できます。

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シアノバクテリアを閉じ込めた3Dプリンタで形成可能な建材 / Credit:Dalia Dranseike(ETHZ)et al., Nature Communications(2025)

研究チームは、シアノバクテリアの一種を特殊なハイドロゲルの中に封じ込めることで、光・水・CO2・栄養が内部に届きやすく、細が生きたまま活動できる人工素材を構築しました。

この素材は3Dプリンターで成形が可能で、硬化後もゲルの中で細菌は生存し、光合成を続けます。

内部構造は、光が通りやすいように設計されており、必要な栄養分が毛細管現象によって素材全体に行き渡るよう工夫されています。

研究の目的は、「二重の炭素固定」の実現です。

これは、シアノバクテリアが成長する過程でCO2を有機物(バイオマス)として取り込む可逆的な固定と、光合成により周囲の化学環境を変化させ、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムといった鉱物としてCO2を不可逆的に固定する、2つのメカニズムを指します。

これにより、短期的にも長期的にもCO2を封じ込めることができる、非常に効率の良い炭素吸収システムが実現されました。

次ページ3mの柱が最大18kgの二酸化炭素を吸収!建築物が“呼吸”する未来へ

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