4種類の「腕ふり」を発見!
本調査では、2種類のコウイカ(ヨーロッパコウイカ:Sepia officinalis とバンダコウイカ: Sepia bandensis)を対象に実験を実施。
それぞれの種を大西洋とインド太平洋で採取し、成体のヨーロッパコウイカ8匹と若いバンダコウイカ10匹を水槽内に入れて、腕ふりのサインをビデオに記録しました。
その結果、コウイカたちは明らかに特定の腕ふりによって、仲間とコミュニケーションを取っていることが見て取れました。
さらにビデオの分析から、その腕ふりは以下の4タイプに分けられています。
・1つ目は「アップ(Up)」と呼ばれる腕ふりで、腕をまっすぐ上に持ち上げる動作。
・2つ目は「サイド(Side)」と呼ばれる腕ふりで、腕を横方向に動かす動作。
・3つ目は「ロール(Roll)」と呼ばれる腕ふりで、腕を頭の下でくるりと巻き込む動作。
・4つ目は「クラウン(Crown)」と呼ばれる腕ふりで、腕を左右対称に開くように配置する動作。
それぞれの腕ふりはこちらの動画で確認できます。
(※ 視聴の際は音量にご注意ください)
これらのサインを撮影した映像を「上下正しい向き」または「逆さま」にして別のコウイカに見せたところ、コウイカは正しい向きの映像に対してより頻繁に反応し、しばしば同じジェスチャーを返してきました。
これはお互いに特定の腕ふりの意味合いを理解して、返事を返していることを示唆します。
他方で、逆さまにした腕ふりはコウイカにとって意味をなさないので、返事をしなかった可能性があります。

さらにチームは、コウイカの腕ふりが視覚的にだけではなく、触覚的にも意味を持っている可能性を見出しました。
それは腕ふりで発生する「水中の振動」です。
たとえば、水槽内に大きな岩があって互いに姿が見えなくても、コウイカたちはサインを続けていました。
水中に振動が伝わっており、それが知覚されている可能性があるのです。
これは人間のように話し言葉を持たないコウイカたちが編み出したコミュニケーションスキルなのかもしれません。
しかし他方でチームは、これらの腕ふりがどのような意味を持ち、コウイカたちが互いに何を伝え合っているのかまでは明らかにできていません。
今のところ、求愛行動という説もありますが、幼体も同じジェスチャーをしていたため、これは適切ではないようです。
防御のサインや狩りに関する何らかの動作である可能性、あるいは気分や感情を表現するための仕草の線もあり、研究者らは今後の調査で腕ふりの意味を解き明かしたいと述べています。