5.9万人が答えた「仕事満足度」の真実

この研究ではエストニア・バイオバンク参加者から収集されたアンケートデータを分析しました。
参加者は自分の職業、年収、性格テストの結果、現在の仕事満足度、そして全体的な人生満足度を詳しく報告しています。
すると職業によって平均的な仕事満足度と人生満足度に有意な差があることが確認されました。
統計的なばらつきを示す効果量で見ると、職業によって仕事満足度は全変動の約7%(調整前)~6%(調整後)が説明され、人生満足度も約5%(調整前)~1~2%(調整後)が説明されるという結果です。
これらの値は心理学や社会学の分野ではかなり大きな差とされ、「職業による満足度の違い」が確かに存在することを示唆しています。
さらに、年齢・性別・学歴・性格などをすべて統計的にコントロールしてもなお職業間の満足度の差が残りました。
これは「どの職業に就いているか」という要因自体が幸福感に独立した影響を与えている可能性を示します。
では具体的に、どの職業が満足度の高い「幸せな仕事」なのでしょうか。

分析によれば、仕事満足度が特に高かったのは「人々の役に立つ」「自主性が高い」と感じられる仕事でした。
例えば聖職者、医師や看護師などの医療系専門職、作家といった職業は平均して仕事満足度が非常に高く、「就いてよかった」と思う人が多いことが分かっています。
意外にも歯科医、助産師、理学療法士に加え、美容師やソフトウェア開発者も上位にランクインしました。
総じて、自分の裁量で人に貢献できる仕事、創造性を発揮できる仕事が上位に並んでいると言えそうです。
一方、仕事満足度が低かった職種には共通点があります。
工場や倉庫の作業員、厨房スタッフ、清掃員、販売員などの肉体労働系や単純労働系の仕事が軒並み下位に位置しました。
またコールセンターのオペレーターや市場調査のインタビュアーといった単調で拘束が多い仕事も満足度が低い結果でした。
研究者たちは「職業は人格特性と並んで人生の満足度を左右する最も重要な要因の一つ」であり、人格の影響を差し引いてもなおその効果が見られると結論付けています。
もう一つ興味深い結果は、「人生満足度」の職業差です。
仕事満足度が高い人はそのまま人生全体にも満足している場合が多いですが、一致しないケースも見られました。
例えば心理学者や特別支援学校の教師、船の機関士、さらには板金工などは人生満足度が高い職業の上位に挙がりました。
必ずしも高収入とは言えない仕事ですが、自分の人生に誇りを持ちやすい職業と言えるかもしれません。
一方で警備員、給仕スタッフ(ウェイター)、セールス営業、化学技術者(化学エンジニア)などは人生満足度が低い職業として名が挙がっています。
仕事そのものの満足度が低い職種ではやはり人生全般にも不満を感じやすい傾向がありますが、化学エンジニアのように仕事満足度は平均的でも人生全体の満足度が低めという例もあり、仕事以外の要因も含めた複合的な検討が必要と言えます。