ここまで減った読書習慣

「娯楽目的の読書」とは、仕事や勉強のためではなく純粋に楽しみや興味から行う読書のことです。
小説やノンフィクション、雑誌・新聞を読んだり、電子書籍やオーディオブックを利用したり、子どもに読み聞かせをすることも含まれます。
こうした自発的な読書習慣は語彙や読解力の向上、学業成績や将来的な収入アップといった直接的な効果だけでなく、ストレスや不安の軽減、抑うつ症状の緩和、睡眠の質向上、認知機能の維持、さらには長寿につながる可能性も指摘されています。
他者との共通の読書体験を通じて文化的な理解を深めたり、社会的なつながりや帰属意識を育む効果もあり、読書は個人の娯楽を超えて幅広い価値を持つ活動と考えられています。
にもかかわらず、近年アメリカで「人々が本を読まなくなってきているのではないか」という懸念が高まってきました。
例えば米国芸術基金(NEA)の調査では、1年間に娯楽で本を少なくとも1冊読んだ成人の割合が1992年の61%から2022年には49%に低下しています。
高校生年代についても、1970年代後半には毎日何らかの読書をしていた17~18歳が6割に達していましたが、2016年にはわずか16%と激減しました。
一方で調査手法によっては異なる傾向も報告されており、ピュー研究所の世論調査では「過去1年間に本を読んだ成人」は2010年代を通じて約75%で安定しているとの結果もありました。
こうした相反するデータの背景には、調査方法の違いがあると考えられます。
自己申告によるアンケートでは「本当は読んでいないのに読んだと言ってしまう」社会的望ましさバイアスや、1年分の読書を振り返る記憶の不正確さなどが影響し、調査ごとに結果にばらつきが生じていた可能性があります。
また青少年に限定した研究は多い一方で、成人全体を対象にした長期的なデータは限られていました。
このような背景から、今回の研究チームは全米規模の時間調査データを用いて、米国人の娯楽読書習慣が本当に減っているのかを包括的に検証しました。
特に過去20年間(2003〜2023年)の長期トレンドに着目し、読書離れの実態とその傾向が年齢や性別、人種・民族、学歴、所得、居住地域(都市か地方か)、健康状態といった人口学的要因によってどう異なるかを詳しく調べることが目的です。