スマホ時代、読書はどう生き残る?

今回の研究は、国の大規模調査データを用いることで米国人の読書離れが過去20年にわたって着実に進行してきた実態を裏付ける強力なエビデンスを提供しました。
従来の断片的な調査では把握しにくかった長期トレンドを明らかにした点で、その意義は大きいと言えます。
「29%から18%へ」という数字が示す通り、もはや日常的に本を読む人は少数派になりつつあるのが現状です。
この結果について研究チームは「読書離れの傾向は幅広い恩恵をもたらす読書活動が軽視されつつあることを意味しており憂慮すべきだ」と述べています。
読書には前述したような多くの利点があるだけに、このような習慣の衰退は個人の教養や心の健康だけでなく、社会全体の文化的・知的基盤にも影響を及ぼしかねません。
では、なぜこれほどまでに人々は本を読まなくなったのでしょうか?
本研究では原因の分析までは行っていませんが、専門家や教育関係者の間ではデジタルメディアの台頭が大きな一因だと指摘する声が多く聞かれます。
米国芸術基金の報告書も「文学は今や膨大な電子メディア群と競合している」と述べており、スマートフォンやソーシャルメディア、動画配信サービスなど娯楽の選択肢が爆発的に増えた現代では、どうしても本から人々の注意がそれてしまいがちです。
実際、アメリカ人は平均して1日6時間以上を何らかの画面(スマホやテレビ)に向かって過ごしているとのデータもあります。
あるNPRの番組ホストは「今や書籍は世の中のあらゆる『コンテンツ』と競争しなければならない」と述べており、情報過多の時代に腰を据えて読書に向かうこと自体が難しくなっている現状を物語っています。
また、読書量の低下傾向自体は実は今に始まったことではなく、スマホやインターネット登場以前の1980年代から既に下降線を辿っていたという指摘もあります。
20世紀後半にはテレビが家庭に普及し、人々の余暇時間を大きく奪ったことが読書離れの遠因になったとも言われています。
これらを踏まえると、近年の急激なデジタル化が拍車をかけたものの、長年にわたる生活様式の変化が徐々に読書文化を浸食してきた側面もあると言えるでしょう。
今回明らかになったように、読書習慣の衰退は特に一部の層で著しく進んでいます。
研究者らは、黒人や低学歴・低所得層、地方在住者、障がいを持つ人々といった読書機会が限られがちなグループに対し、図書館やコミュニティを通じた支援策や働きかけを強化する必要性を訴えています。
「読書推進政策は教育上の理由から子どもに焦点が当たりがちだが、大人も対象に考慮すべきだ」と研究チームは指摘します。
ストレスや抑うつの増加、不眠の蔓延など現代の社会問題に対して、読書が一つの健全な対処法となり得ることを踏まえれば、大人の読書離れにも目を向けることが重要だというわけです。
実際、米国では公共図書館を拠点に地域住民の読書を促進する取り組み(例:NEAの「ビッグリード」プログラム)や、有名人によるオンライン読書会などの試みも行われており、6百万人以上が何らかの読書イベントに参加したという報告もあります。
しかし、調査によれば日常的に図書館で読書する人はごく僅か(2023年時点で0.3%)に過ぎず、従来の図書館任せのアプローチだけでは限界があるかもしれません。
研究者らは、今後も継続的に人々の読書実態をモニタリングしつつ、有効な介入策を見出していくことが重要だと強調しています。
娯楽としての読書は、単なる趣味以上の価値を持つ行為です。
本を読むことで得られる豊かな体験や知識は、個人の人生を彩るだけでなく社会の活力となります。
それだけに、今回明らかになった読書離れの現状は深刻ですが、同時に読書の魅力を次世代に伝えていくことの大切さを改めて示す結果とも言えるでしょう。
デジタル時代に即した新しい読書スタイルの提案や、誰もが気軽に本と触れ合える環境づくりなど、未来に向けた創意工夫が求められています。
研究チームの呼びかけるように、まずは現状を直視し、そしてもう一度「読書の持つ力」を社会全体で見直すことが必要なのかもしれません。
皆さん電子書籍で読んでいる説。
スマホ含めて総合で読んでいる文字数で見ると
案外変わってないかも知れない