宇宙で生存できる進化を遂げていた
中国宇宙ステーション「天宮」での微生物調査は、居住区の衛生状態や宇宙飛行士の健康維持を目的として定期的に行われています。
そんな中、2023年5月に天宮に滞在していた「神舟15号」の乗組員が、キャビン内から綿棒でサンプルを採取。
それらを地球に持ち帰って分析したところ、そこには人類が地球上では見たことのない細菌が含まれていたのです。
この新種は天宮(Tiangong)にちなんで、「ナイアリア・ティアンゴンゲンシス(Niallia tiangongensis)」と命名されました。
今回の新種は、もともと「バチルス属(Bacillus)」という病原性種と考えられていたものの、数年前に新たな属に再分類された「ナイアリア・サーキュランス(Niallia circulans)」という土壌性の桿菌(棒状の細菌)の近縁種であることが特定されています。
Niallia tiangongensis sp. nov., isolated from the China Space Station. #TIC2025 https://t.co/Ii4chy2gPH pic.twitter.com/YDHooCx6xk
— Science News (@SciencNews) May 17, 2025
注目すべきは、その生存戦略です。
この細菌は栄養に乏しく、放射線や乾燥などのストレスが極めて大きい宇宙環境においても、「芽胞(がほう)」という強靭な休眠構造を形成し、その中で生存に不可欠な化学成分を保護することで生き延びられることがわかりました。
さらにゼラチンを炭素や窒素の栄養源として分解できる酵素を備えており、分解したものを利用して、周囲にバイオフィルム(保護膜)を構築し、外部環境から身を守る能力も持っていたのです。
このような能力は、宇宙という極限環境に適応するうえで、極めて有利に働くと考えられます。