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Credit: University of Exeter – Killer whales make seaweed ‘tools’ to scratch each other’s backs(2025)
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昆布を使ったシャチの奇妙なルーティンを初発見!

2025.06.24 20:00:13 Tuesday

道具を使ったシャチの習慣が発見されました。

このほど、英エクセター大学(University of Exeter)らにより、米北西部ワシントン州沖の「セイリッシュ海」で、シャチたちが自らちぎった昆布の茎を使って、仲間と背中をこすり合う奇妙な行動が確認されたのです。

この発見は、シャチが“道具”を作り、仲間と協力しながら使っている初の証拠であり、海洋哺乳類の行動における驚くべき知性と文化の存在を示すものとなります。

研究の詳細は2025年6月23日付で科学雑誌『Current Biology』に掲載されています。

Killer whales make seaweed ‘tools’ to scratch each other’s backs https://news.exeter.ac.uk/faculty-of-health-and-life-sciences/killer-whales-make-seaweed-tools-to-scratch-each-others-backs/ Orcas’ Strange Beauty Routine Revealed by Scientists For The First Time https://www.sciencealert.com/orcas-strange-beauty-routine-revealed-by-scientists-for-the-first-time
Manufacture and use of allogrooming tools by wild killer whales https://doi.org/10.1016/j.cub.2025.04.021

昆布を「選び」「ちぎって」「活用」、道具づくりの証拠

この研究を主導したのは、米クジラ研究センター(CWR)とエクセター大学の研究者たちです。

彼らが観察していたのは、絶滅が危惧される「サザンレジデント」と呼ばれるシャチの小さなグループで、現在その数はわずか73頭。

1970年代から世界で最も詳しく研究されてきた群れです。

チームは近年のドローン技術を活用し、海上からシャチの自然な行動を高精細に記録する手法を取り入れていました。

そしてある日、研究者の一人が、2頭のシャチが互いに接触しながら昆布を体の間に挟んでこすり合っている様子を発見したのです。

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観察された行動/ Credit: Michael N. Weiss et al., Current Biology(2025)

観察によると、シャチたちはオオウキモと呼ばれるコンブ科の海藻の先端を自ら噛みちぎり、茎の部分を体と体の間に挟んで転がすようにこすり続けていました。

昆布の茎は中が空洞でしなやか、それでいて表面は滑らかで、まるで水を詰めたホースのような性質を持っており、グルーミング(毛づくろい)には最適な素材といえます。

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モントレー水族館に展示されているオオウキモ/ Credit: ja.wikipedia

この一連の行動は新たに「アロケルピング(allokelping)」と名付けられました。

“アロ(allo)”は「他者と共同で」という意味、”ケルプ(kelp)”は「昆布」という意味で、すなわち仲間同士で昆布を使って体をこする行動を意味します。

これまでにもイルカが海綿を使って口先を保護する行動や、シャチが海岸の石に体をこすりつける行動は知られていましたが、「仲間との共同作業」「道具の加工」「反復利用」といった要素がすべて揃った事例は、海洋哺乳類としては前例がありません

このアロケルピングは単なる遊びではなく、意図的に対象を選び、仲間と協力しながら繰り返し行う、高度な社会的行動だと考えられます。

では、この奇妙な昆布グルーミングには、どのような目的があるのでしょうか?

次ページ「昆布こすり」の目的とは?

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