私たちの体はなぜイソギンチャクと共通点を持つのか?

今回の研究によって、「人間とイソギンチャクが同じ設計図(BMPシャトリング)を共有している可能性」が示されました。
これは言い換えれば、人間の体づくりの原型が、想像以上に古く、なんと6億年以上前の海の中ですでに存在していたかもしれない、ということです。
一見すると人間とはまるで違う生き物のように思えるイソギンチャクが、私たちとまったく同じ仕組みを使って体を形づくっていることが明らかになったのです。
この結果は、私たちが学校で習ったような「複雑な生き物は後から新しく高度な仕組みを獲得した」というイメージを大きく覆す可能性があります。
もしかすると、生き物の進化は、常に新しい仕組みを次々に獲得するのではなく、「古くからある基本の設計図」を少しずつアレンジしながら多様な形を生み出しているのかもしれません。
さらに今回の研究で特に興味深かったのは、BMPというタンパク質が胚の中をただ自由に漂っているのではなく、細胞の表面にしっかりと捕まって運ばれていることが示された点です。
これはまるで、私たちが手紙を直接相手に届けるように、細胞たちが「確実に指示を届ける方法」を使っているということです。
従来の「BMPは細胞の間を自由に漂って軸を決める」という常識を改めることになり、生物学者がこれまで考えてきた発生メカニズムを再検討する大きなきっかけになるでしょう。
研究者たちは、このBMPとコルディンという組み合わせが、生物が進化する過程で何度も繰り返し使われてきた「柔軟で強力な仕組み」である可能性を指摘しています。
つまり、生物はまったく別の進化の道を歩んでいても、同じような体の設計図を何度も再利用して、さまざまな形を生み出しているのかもしれません。
今回、イソギンチャクという「遠い親戚」がこの仕組みを持っていることがわかったことで、こうした古くからある設計図が動物界で広く共有されている可能性はより高まりました。
今後さらに古い時代の化石や、さらにシンプルな生き物を調べていくことで、この「共有された設計図」が生命の歴史のどの段階まで遡れるかをもっと明確にできるでしょう。
もしかすると、私たちの体を作っている仕組みは、地球上の動物が誕生した最初の頃からほとんど変わらず受け継がれているのかもしれません。
イソギンチャクと私たちが同じ設計図を使っているという今回の発見は、進化の壮大さと奥深さを改めて私たちに教えてくれます。
同じ設計図からここまでの違いを生み出せる自然凄い。