これは「異種間の助け合い」なのか?
そもそも、なぜザトウクジラが湾内に迷い込んでしまったのでしょうか?
ザトウクジラは、毎年5月から11月にかけて、南極の冷たい海からオーストラリア北部の温暖な繁殖地へと移動する長距離回遊動物です。

その移動距離は往復1万キロを超え、なかには1万3000kmという記録を持つ個体も確認されています。
その旅の途中で、捕食者に追われたり、体調不良や傷を負ったり、あるいは船の音や漁具の干渉によって混乱し、進路を誤ることがあるのです。
そうした場合、ザトウクジラは一時的に静かで安全な浅瀬に避難することがあります。
今回の迷子クジラも、おそらくそういった理由からクンバナ湾に入ってしまったと考えられます。
では、イルカたちの行動は本当に「助ける」意図があったのでしょうか?
これは動物行動学でも難しい問いです。
イルカは非常に知能が高く、群れで狩りをしたり、傷ついた仲間を支えたりする社会的行動を見せることで知られています。

しかし、異種の動物に対して明確に利他的な行動を示すケースは非常に稀です。
それでも、今回のイルカたちの動きは、少なくとも「邪魔をする」でも「攻撃する」でもなく、むしろ誘導や同行に近い行動だったことは間違いありません。
Dolphin Discovery CentreのFacebook投稿では、「イルカたちはクジラの周囲で遊びながらゆっくりと沖合に導くような動きを見せた」と記されており、「協力行動かどうかは断定できないが非常に珍しい自然現象だ」と言えます。
そして、過去にはイルカが溺れそうな人間を支えたという記録や、犬が他種を助けた事例など、異種間協力と思われる例は存在しており、今後さらなる研究が求められる分野です。
自然界には、私たちの理解では説明しきれない行動・現象が多く存在します。
ときには、異なる種の間にも予想もしない関係性が築かれる可能性があります。
もしかしたら、今も世界のどこかで、動物たちが異種間で助け合っているかもしれません。
人間のことも助けて。
動物「人間嫌ぁぁぁ。」