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一酸化炭素中毒の初の解毒剤を開発「数分で血液を浄化」 (2/2)

2025.08.18 17:02:29 Monday

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数分で赤血球からCOを引き抜き、安全性も高い

マウスの実験では、RcoM-HBD-CCCを注射すると、赤血球にしがみついていた一酸化炭素が短時間(数十秒~数分)でこのタンパク質に移り替わることが確認されました

その結果、血液中のヘモグロビンは再び酸素を運べる状態に戻り始めました

このタンパク質は一度つかまえた一酸化炭素をほとんど離さない強さを持つため、再び血液に戻る心配が少ない点が大きな利点です。

さらに安全性の観点でも前進がありました。

過去にはヘモグロビンそのもののようなタンパク質を投与すると、一酸化窒素(nitric oxide, NO)という血管を広げるガスを奪ってしまい、血圧が上がるなどの副作用が問題になりました。

今回のRcoM-HBD-CCCはそんな一酸化窒素(NO)との不要な反応性が低く、マウスの実験では血圧の大きな乱れが見られず、臓器のダメージを示す検査値の上昇も確認されませんでした。

投与後については、約45分後の尿から、このタンパク質がCOを抱えたまま排出されていることが確かめられました。

体に長く残りにくい点も安心材料になります。

救急車で投与できる「真の解毒剤」になるかも

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もしこの解剤候補が人でも安全かつ有効だと確かめられれば、医療の現場は大きく変わります。

救急車に常備して現場で投与すれば、病院に着く前から血液の「浄化」を始められる可能性があるのです。

その結果、火災事故などでも現場で一酸化炭素中毒の治療を実施でき、後遺症のリスクを下げ、助かる命を増やせるかもしれません。

一方で、現時点のデータは動物実験での成果であり、人で同じ効果と安全性が得られるかは慎重に確認する必要があります。

必要な投与量、投与のタイミング、繰り返し使った場合の影響など、臨床試験で解くべき課題は多く残っています。

それでも「短時間で血液から一酸化炭素を抜く」というコンセプトは、従来の酸素で時間を掛けてCOを押し出すという“一酸化炭素中毒治療”の限界を補う新しい発想です。

一酸化炭素中毒は、家庭の事故から火災や災害時まで、誰にとっても身近なリスクです。

RcoM-HBD-CCCという小さなタンパク質の掃除屋は、その見えない脅威に対して、本格的な解毒剤の有力候補となり得る力を示しました。

実用化までには検証が必要ですが、救急の現場で命と生活の質を守る、新しい選択肢が見えてきたと言えるでしょう。

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一酸化炭素中毒の初の解毒剤を開発「数分で血液を浄化」 (2/2)のコメント

ゲスト

凄い解毒剤ですね。細菌や菌類が持つ可能性は天井知らずですね。タンパク質なので繰り返し投与すれば何らかのアレルゲンとなる可能性はあるのかもしれませんが、恐らくほとんどの人は人生で一酸化炭素中毒に遭う回数は1回未満でしょうから、心配はないように思います。

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