朝の一杯は、心にも効いていた

今回の研究により、「朝のコーヒーで幸せになる」という多くの人が体感的に語ってきた現象がデータで裏付けられました。
特に朝起きてすぐのカフェインがポジティブな感情を増幅させるという結果は、眠気を吹き飛ばし一日のスタートを切るのにコーヒーが一役買っていることを示しています。
研究チームはこの理由について、カフェインの薬理作用が関係している可能性を指摘しています。
カフェインは脳内で眠気を引き起こす物質「アデノシン」の働きを阻害し、ドーパミンやノルアドレナリンといった前向きに作用する神経伝達物質の働きを高めることが知られています。
朝一番にこれらの作用が強く現れることで、気分が上向きになり活力が湧くのでしょう。
また夜間の睡眠中に起きる軽いカフェイン切れの状態を朝の一杯が解消し、それがほっとした気分や幸福感につながっている可能性もあります。
実際、適度なカフェイン摂取は脳を目覚めさせ気分を良くすることが知られていますが、今回の研究はその関係を日常生活のデータで示した点に大きな意義があります。
従来の研究は実験室で短時間に測定されたものが多かったため、普段の生活の中でコーヒーを飲むことがどのように気分に影響するかを詳しく示した今回の研究は特に重要です。
さらに注目すべきは、今回の調査に参加した若者の間では、このポジティブな気分が高まる効果が普段のカフェイン摂取量やメンタル面の違いに関係なく広く見られたということです。
たとえば「普段コーヒーをあまり飲まない人は効果が薄いのでは?」とか「いつも飲んでいる人は効果を感じにくいのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、少なくとも適度にカフェインを摂取している今回の参加者では差がなく気分が向上しました。
この発見は「カフェインの効果は単にカフェイン切れを解消するだけだ」という考え方に対し、別の可能性を示しています。
つまり、カフェインはもともと人の気分を良くする性質があり、特に朝のタイミングでそれがはっきり現れるということかもしれません。
一方で、ネガティブ感情を大きく和らげる効果はあまり見られなかった点にも注意が必要です。
コーヒーには「元気をさらに元気にする」効果はありますが、「落ち込んだ気分を一気に回復する」というような強力な効果は期待できません。
落ち込んだ気分を改善するには、別の方法や根本的な原因へのアプローチが必要です。
カフェインは世界で最も広く使われている嗜好品の一つであり、コーヒー、紅茶、エナジードリンク、さらにはチョコレートに至るまで私たちの生活と切り離せない存在です。
人類は何百年も前からこの「眠気覚ましの妙薬」を活用してきました。
研究の背景情報として、ミツバチやマルハナバチなどの昆虫もカフェイン入りの蜜を好んで集めることが知られています。
それほど普遍的なカフェインの魅力が今回の研究で改めて確認されたと言えるでしょう。
ただし研究者たちは、カフェインの摂りすぎには注意が必要だと強調しています。
飲みすぎるとカフェイン依存になったり、不安感が強まったり、夜の睡眠を妨げたりするリスクがあります。
また今回の研究には普段まったくカフェインを飲まない人は参加していないため、そのような人々への影響は今後の課題となっています。
適切な量を守りながら上手に利用すれば、朝のコーヒーは一日を気持ちよくスタートさせる良い習慣になるでしょう。
うつ持ちでカフェイン中毒の母には朝一のカフェインはあまり効いてないようです。