認知ワクチンの意外な副作用

今回の研究は、私たちがフェイクニュースや陰謀論といった誤った情報にだまされにくくなるために、「考え方そのものを変える」新しい方法を提案したものです。
私たちはふだん、何かのニュースや情報を見たり聞いたりするとき、「これは本当だろうか?」と一度立ち止まるよりも、「なるほど、そうなのか!」とすぐに納得してしまいがちです。
でも、フェイクニュースや陰謀論にだまされないためには、自分がもともと持っている意見や考え方を「ちょっと疑ってみる」ことが重要だと心理学では考えられています。
この研究で使われた「認知ワクチン」というのは、自分の意見や考え方をすぐに信じ込まないように促す短いメッセージのことです。
今回の実験では、この短いメッセージを読んだだけで、自分の意見を「絶対に正しい」と決めつける態度が減り、情報を冷静に判断できるようになることがわかりました。
この考え方の柔軟性を高める方法は、特定のニュースやデマに限定されるのではなく、色々な種類の誤った情報に対して幅広く役立つ「心のワクチン」になる可能性があります。
今までの研究や教育方法の多くは、特定のテーマ(例えばコロナのデマなど)についてのみ注意を呼びかけるものでしたが、今回は「考え方そのもの」を変えることで、新しく出てきた別の話題にも対応できる方法だと言えます。
また、この方法は難しいトレーニングや特別な道具を使わず、文章を読ませるというシンプルな方法なので、学校の授業やSNSなどで簡単に導入できる可能性もあります。
ただし、実際に多くの人が使うためには、より短くてわかりやすい表現にするなどの工夫や、導入するための費用や手間についても今後詳しく調べる必要があります。
一方で、このワクチンの効果には注意すべきポイントもあります。
今回の実験の結果、情報を慎重に疑う態度が強くなるあまり、study2では少しだけ「全体的な不信感」が高まるという副作用も見られました。
研究チームはこれを「だまされにくくなった」という良い面として捉えていますが、あまりにも疑いすぎると、社会全体で必要な信頼関係まで壊してしまう可能性もあります。
そのため、このワクチンを広く使うときには、副作用が起きないかどうかを慎重に見守りながら進める必要があるでしょう。
さらに、今回の研究チームは、一回だけの短いメッセージで終わりにするのではなく、時間をおいて定期的に「思い出すための短いメッセージ(リマインダー)」をくり返すことで、効果がもっと長持ちするかもしれないとも考えています。
これは「ブースター接種」と呼ばれる本物のワクチンの仕組みと似ていて、何度か同じ内容をくり返すことで免疫力を維持する考え方を利用したものです。
まとめると、この研究が示しているのは、フェイクニュースや陰謀論に負けないためには、「自分の考えをちょっと疑う」という小さな習慣が何よりも大切だということです。
一度に強力な効果を求めるのではなく、日常の中で筋トレのように少しずつ考える力を鍛えていくことが、最終的には大きな力となって私たちをフェイク情報から守ってくれるかもしれません。
認知ワクチンの接種直後に効果があることはわかったが、さて、どのくらいの期間効果が持続するのだろう?
陰謀論を信じる側も信じない側も同じ思考回路でそこに堕ちている人たちなので、本気で対策してしまうと違う問題が出てきちゃうと思うのですよね。
人が本当に自分の脳みそだけでもの考えるようになると集団はその形を維持できなくなるので、それを集団の統治者が果たして受け入れることができるのかという。
自分の権力を失うことになりますからね。