女性がかかっていた病気とは?
最終的に医師たちは、この女性が「プロソポメタモルフォプシア(prosopometamorphopsia, PMO)」と呼ばれる症状を抱えていると診断しました。
この稀な状態では、人間の顔の認知に異常が生じ、顔の特徴が極端に歪んで見えるのです。
例えば、顔の一部が大きくなったり小さくなったり、垂れ下がったり横に伸びたり、位置がずれて見えることがあります。
また「片側プロソポメタモルフォプシア(hemi-PMO)」の場合は顔の片側だけが歪んで見えますが、「全面プロソポメタモルフォプシア(full-face PMO)」では顔全体が歪んで見えてしまいます。
この状態は、脳の構造的な変化や、てんかん、片頭痛、脳卒中といった脳機能に影響を与える疾患と関連があるとされています。
そこで医師たちはまず、女性に対して抗てんかん薬である「バルプロ酸」を1日1回処方しました。
バルプロ酸は発作を防ぐ効果があり、片頭痛や双極性障害の症状を和らげる作用もあります。
この治療によって、女性の「顔がドラゴンに見える」視覚的な幻覚はコントロール可能な範囲に収まりました。
しかしその後、彼女は就寝中に「大きな音が聞こえる幻聴」を体験するようになります。
それに対応して医師たちは、アルツハイマー病やパーキンソン病に伴う認知症の症状治療に一般的に用いられる「リバスチグミン」への切り替えを行いました。
この薬により聴覚的な幻覚は減少し、視覚的な症状も耐えられるレベルまで軽減しました。
治療から3年後、患者は職場での状況が安定し、社会的な人間関係も改善したと報告しています。
女性の体験は怪談ではなく、脳がつくり上げる「顔」という知覚の仕組みが崩れた結果でした。
MRIで見えた白質の病変と、顔処理領域の電気活動の偏りが重なったとき、現実の顔は脳内で別の像へと組み替えられてしまいます。
適切な薬物治療によって症状は抑えられ、彼女の生活は再び安定しました。
私たちが「当たり前」に見ている他者の顔は、網膜だけでなく脳の高度な計算によって初めて成立しているのだと、この希少例は教えてくれています。
幻覚は見た経験がありますが、見えてる光景そのものは本当にリアルですからね。
私の場合はそのリアルさのおかげですぐに幻覚だと分かるのですが。
ド近眼なのですけど、幻覚で見える光景ってそうなる前に見えていた世界の状態で見えるので、ものすごくクリアなんですよね。
メガネかけてないのにそんなクリアな光景見えるはずがないわけでして…。
ちゃんとくっきり見えていた頃を脳は覚えているのだなと感心しちゃいます。
生まれつき目が見えない人たちが幻覚見たらどういう光景が見えるのかは結構興味ありますね。
脳は映像を受信したことがない中で偽りの映像をどう作り出すのかという。