人工甘味料は脳にダメージを与えるのか?
現在、世界の認知症患者数は2050年までに3倍に膨れ上がると予測されており、研究者たちは脳の老化に影響する生活習慣因子の解明に力を注いでいます。
従来から、砂糖の過剰摂取は心血管疾患や糖尿病だけでなく、脳の健康にも悪影響を与えることが知られてきました。
そのため多くの人々が、砂糖の代替として低カロリーまたは無カロリーの人工甘味料を選んでいます。
アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムカリウム、エリスリトール、キシリトールなどは、ダイエット飲料やヨーグルト、プロテインバー、ガム、さらには卓上の甘味料として日常的に利用されています。
見た目も手軽で「砂糖より安全」というイメージが広がり、世界中で急速に普及しました。

しかし一方で、人工甘味料には糖代謝異常、心血管リスク、さらにはうつ症状との関連が指摘されてきました。
今回の研究は、それらに加えて「脳の健康」という観点から長期的な影響を調べた点で大きな意義があります。
研究を行ったのは、ブラジルの6都市で2008年から継続している「ブラジル成人健康長期縦断研究(ELSA-Brasil)」です。
35歳以上の公務員を対象とした大規模調査で、今回の解析では12,772人の中高年男女が追跡されました。
参加者はまず食習慣を詳細に記録する質問票に回答し、7種類の甘味料(アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムカリウム、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、タグアトース)の摂取量が推定されました。
その後、2008–2019年にわたり8年間で3回にわたる認知機能テストが実施されました。
テストは言語流暢性(単語を素早く列挙する力)、作業記憶、単語再生、処理速度などを含み、記憶力や思考スピード、言葉の使い方といった幅広い認知領域を評価しました。
こうした長期的・大規模な追跡は、これまでの研究には欠けていた部分です。