赤ちゃんの泣き声が引き起こす体の変化
赤ちゃんの泣き声は、ただの大きな音ではありません。
赤ちゃんが痛みや強い不快感を感じているとき、声帯は激しく振動し、声は乱れ、私たち大人が普段あまり聞き慣れない「不協和音」のような泣き方になります。
この混沌とした泣き声は、専門的には「非線形現象(Nonlinear Phenomena)」という難しい名前で呼ばれており、実は哺乳類の進化のなかで「どうしても無視できない信号」として組み込まれてきました。
今回の研究では、赤ちゃんにあまり馴染みのない成人ボランティアたちに、異なる状況(お風呂で不快になったときや、予防接種で針が刺さったときなど)の赤ちゃんの泣き声を16種類聞かせ、そのときの顔の皮膚温度をサーマルカメラで細かく測定しました。

その結果、赤ちゃんの「不協和音的な泣き声」を聞いたとき、大人たちの顔の皮膚温度は明らかに上昇しました。
これは体内の血流が急激に顔へと集まったためで、いわゆる「自律神経」が情動的に反応していた証拠です。
さらに興味深いのは、この反応に男女差がほとんどなかったことです。
「母性本能が強いから女性の方が反応しやすい」といった一般的なイメージとは違い、男女ともにほぼ同じくらい強い“生理的な反応”が見られたのです。
また、泣き声に「非線形現象(NLP)」が多く含まれているほど、大人の顔面温度の上昇も大きくなることが示されました。
つまり、人間は「赤ちゃんの苦しさ」を音の特徴として本能的にキャッチし、体が無意識にスタンバイ状態になるのです。