・ココナッツオイルは健康的な食材ではないという発表が出された
・ココナッツオイルは体に良いという従来の説は、科学的裏付けに乏しかった
・ココナッツオイルは適切な量を摂取するかぎりは問題がなく、バランスを考えることが大切である
健康や美容に良いとされ、一大ブームを築いたココナッツオイル。しかしある研究者が、ココナッツオイルを健康に悪いと主張し、「純粋な毒だ」とさえ発言したことが注目を集めています。
「ココナッツオイル不健康論」を発表したのは、ハーバードT.H.チャン・スクール・オブ・パブリック・ヘルスのカリン・ミッシェル教授。「毒」とはやや言い過ぎかもしれませんが、彼女の主張は科学的根拠に基づいており、代謝や脂肪燃焼を助ける健康食材として、ココナッツオイルを熱心に持ち上げてきた信奉者たちの主張よりも説得力がありそうです。
https://www.newsweek.com/coconut-oil-pure-poison-says-harvard-professor-1082046
ココナッツオイルの約82パーセントは飽和脂肪酸からできています。「脂肪が飽和した」状態とは、脂肪酸鎖にある全ての炭素原子が水素原子と結合した状態のことです。
ミッシェル教授と面識があるサックス教授は、「膨大な数の実験結果が、飽和脂肪酸が悪玉コレステロールを増加させることを示している。ミッシェル教授の主張は科学的で明快だ」と語っています。血中の悪玉コレステロール、つまり低比重リポたんぱく質が過剰になると、動脈にプラークと呼ばれる塊ができ、血管の壁を硬くして心臓や血管の病気を引き起こします。サックス教授は、証拠の優位性とは矛盾する研究が発表されることが時々あり、こうした研究はメディアで多く取り上げられがちだが、たいていは間違っていることが多い、と語ります。
アメリカ心臓協会(AHA)は、飽和脂肪酸はあまり健康に良くないという立場を一貫して取っており、ココナッツオイルを「避けるべき食べ物」リストに掲載しています。AHAによると、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸(オリーブオイルなど)に置き換えることで、心血管の病気が約30パーセント減少する、とのこと。一日の摂取カロリー(2,000キロカロリー)のうち、飽和脂肪酸の割合は5〜6パーセント、つまり13グラム以下に抑えるのが良いとされています。大さじ1杯のココナッツオイルに含まれる飽和脂肪酸が11グラムなので、かなり少量だということがわかります。米国農務省や米国糖尿病学会も類似したガイドラインを発表しているようです。
ココナッツオイルを支持する健康上の主張の多くは、動物実験を根拠とするものでした。たとえば、ココナッツオイルが減量に役立つと示した1985年の研究は、実のところココナッツオイルに含まれるカプリン酸に似た化学物質を、ラットに注射しただけに過ぎません。実験では、体重の減少だけではなく、心拍数や基礎体温の低下といった中毒作用も観察されたのですが、ココナッツオイルの摂取に直接関係する現象とは判断されなかったのです。
また、ココナッツオイルが代謝を促すという説も、根拠に問題がありそうです。コロンビア大学のマリー・ピエール・セント・オンジェ氏はかつて、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸には、脂肪減少を促すダイエット効果があると示しました。ところが、セント・オンジェ氏はのちに、中鎖脂肪酸のみから成る精製油を研究に用いたことを報告しました。この油は、中鎖脂肪酸以外の成分からも構成される通常のココナッツオイルとはまったく異なるものです。
以上を踏まえると、ミッシェル教授の主張は説得力があるものに思えます。ただし炭水化物を、加工されたものや全粒穀物など種類別に分類していないこと、対象者の多くが高糖質・低栄養の食事を摂っていたことを考慮に入れていないこと、などの問題点もあるようです。
少なくとも「ほどほどに」摂取するかぎりは、ココナッツオイルに害は無さそうです。瞬時に体重を減らしたり、体を健康にしてくれたりするミラクルフードは、存在しないのかもしれません。何事も大切なのはバランスということでしょう。
via: livescience / translated & text by まりえってぃ