「眠れない夜」は脳をどう変える?認知機能の低下リスク
これまで「睡眠の質」と「脳の健康」との関係は長く疑われてきましたが、具体的にどれほどの影響があるのか、明確なデータは限られていました。
今回の研究は、米ミネソタ州の高齢者2750人(50歳以上、開始時点で重度の神経・精神疾患なし)を長期間にわたり追跡調査したものです。
慢性的な不眠症があるかどうかは、医療記録を用いて少なくとも30日以上の間隔を空けて診断が記録されているかで判定されました。
結果として、443人が「慢性不眠症」グループに、2307人が「非不眠」グループに分類されました。
すべての参加者は、記憶力・言語力・実行機能・空間認識など複数の認知機能を定期的にチェックされました。
このデータをもとに「認知健康スコア」が算出され、時間の経過による変化が追跡されたのです。
その結果、慢性不眠症の人は、そうでない人に比べて「全体的な認知機能スコア」の低下が明らかに速く進んでいました。
さらに、研究期間中に「軽度認知障害」や「認知症」を新たに発症するリスクは、慢性不眠症の人で40%も高いことが判明しました。
このリスク上昇は「実年齢より3.5歳も老化が進む」ことに相当するという試算も報告されています。
とくに影響が大きかったのは「慢性的な不眠」と「自己申告で睡眠時間も減っている」人たちでした。
これらの人は、調査開始時点ですでに他の参加者よりも認知機能スコアが低い傾向があり、すでに脳のダメージが始まっている可能性が示唆されます。
つまり、「単に眠れない」という状態が長期間続くことで、脳の老化スピードが加速し、将来的な認知症リスクも高まってしまうのです。