感染者の唾液で30分以内の反応を確認
研究チームはインフルエンザ感染者から採取した唾液を用いてセンサーの反応を確かめました。
結果は明快で、30分以内にチモールの放出が確認されました。
これは日常のセルフチェックとしても現実的なスピードです。
さらに、ヒトやマウスの細胞を使った試験でも、細胞の機能に変化は見られず、細胞レベルでは毒性が見られないことも示されました。
では、この結果は私たちにどんな未来をもたらすでしょうか。
研究チームは、このセンサーをガムやトローチ、薄いフィルムなどに組み込むことを想定しています。
痛みも不快感もなく、食べる/なめるだけ。
学校や介護施設、医療現場、交通や接客の職場など、感染の広がりを早く止めたい場所での日々のセルフチェックに向きます。
味が出た人は自宅待機や確定検査(PCRなど)へ、という一次スクリーニングの役目をになえるかもしれません。
検査のハードルが下がれば、“症状が出る前に気づいて広げない”という理想に近づきます。
もちろん、課題もはっきりしています。
第一に、ヒトでの臨床試験です。
症状が出る前の段階を含め、実際の暮らしの中でどれくらいの感度・特異度で味が出るかを確かめる必要があります。
第二に、味覚障害のある人や香味に気づきにくい人への配慮です。
研究チームは、より少ない量で強く感じる苦味成分や、色が変わるタイプへの展開も検討しています。
第三に、偽陽性・偽陰性をどこまで減らせるかです。
季節や年齢、口腔環境の違いが結果に影響しないかも、実地で検証が必要でしょう。
こうした課題を残しつつも、この研究が切り開く方向は明るいものです。
「複雑な装置や操作を使わず、「舌」をセンサーにする」
そんな発想が、日常の中の検査のあり方を大きく変えるかもしれません。