その痛み、何円ならもう一度受ける?
私たちは皆痛みを経験しますが、その強さを客観的に比べることは長年の難題でした。
同じ「10」でも人によって感じ方が違い、同じ人でも状況で「5」が揺れるため、従来の自己申告スケールには限界があります。
新薬の効果判定や治療の比較には、より共有しやすい基準が必要です。
そこで研究チームは、新しく「痛みをお金で表す」という手法を採用しました。
この方法では、「痛みをもう一度受けるならいくら必要か」を選択の形で尋ねることで、痛みの程度を測定します。
たとえば、特定の痛みを受けた後に、「もう一度、同じ痛みを受けて3000円もらう」か「痛みを受けずに2000円もらう」か、どちらを選ぶかという二択を様々な値段で何度も提示して、選び替わる境目からその人の“痛みの値段”を推定します。
この方法を評価する実験では、金額を順番に上げていく方式(ME1)と、順不同で提示する方式(ME2)の2種類が用いられました。
参加者は18歳から60歳の健康な成人であり、合計330人規模で実施されました。
そして1つ目は電気刺激で強弱の異なる痛みを体験する実験、2つ目は熱刺激で強弱を変えた実験、3つ目は同じ熱刺激を与えながら、鎮痛剤あるいはプラセボを使う実験が行われました。
各実験で参加者は従来の評価法だけでなく、新しい「痛みに値段をつける」方法でも回答しました。