筋トレで増える細菌・減る細菌
さらに興味深いのは、「筋力の伸び」と「腸内細菌の変化」が連動していたことです。
研究チームは、参加者の筋力向上率に基づき「ハイレスポンダー(筋力が平均33%以上アップ)」と「ローレスポンダー(12.2%未満)」に分けて分析しました。
すると、ハイレスポンダーの腸内では16種類の細菌が増加し、11種類が減少するなど、明らかな変化が見られたのです。
特に注目されたのが「ファエカリバクテリウム属(Faecalibacterium)」と「ロズブリア・ホミニス(Roseburia hominis)」という細菌。
どちらも「酪酸」という短鎖脂肪酸を産生します。
酪酸は腸の健康を保ち、体のエネルギー源となり、有害な細菌が血流に入るのを防ぐ役割も果たします。
実際、過去の研究でも「運動習慣のある人」ほどこれらの細菌が多い傾向が報告されていました。
ただし、今回の研究では便中の酪酸(短鎖脂肪酸)が直接増えたという証拠はなく、あくまで「それを作る細菌が増えた」という結果でした。
また、すべての「健康的な細菌」が増えるわけではなく、逆に減少したものや、「不健康」とされてきた細菌が増えたケースもありました。
このことは、腸内細菌叢は人それぞれで、同じ細菌でも人によって良い働きをしたり、そうでなかったりすることを示しています。
筋トレで腸内細菌が変化したのか、腸内細菌の変化が筋力アップを後押ししたのか、その因果関係はまだはっきりしていません。
さらに食事の変化やモチベーションの違いなど、他にもさまざまな要因が影響している可能性があります。
今後の研究では、筋トレによる腸内細菌叢の変化が、健康に与える良い側面と悪い側面をより詳しくしていく必要があるでしょう。