スタンフォード大学の研究から「その確率も教えて」でAIが覚醒すると判明
スタンフォード大学の研究から「その確率も教えて」でAIが覚醒すると判明 / Credit:Canva
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スタンフォード大学の研究から「その確率も教えて」でAIが覚醒すると判明 (3/3)

2025.10.31 20:00:09 Friday

前ページ確率を言わせたら閉じ込められていたAIの創造性が覚醒した

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AIの隠れた個性を取り戻す鍵は「問い」にあった

言語化サンプリングの威力は画像でも発揮されます
言語化サンプリングの威力は画像でも発揮されます / Fig.5は「言葉の多様さが、画像の多様さにもそのまま映る」ことを見せる図です。お題は「宇宙飛行士が馬に乗っている」。まず上段はDirect Prompting(ふつうの頼み方)で、お題からキャプション(短い説明文)を作らせ、そのキャプションを画像生成AIに渡して絵にします。すると毎回の説明文は似た方向に寄り、出来上がる画像も砂漠の風景で写実的といった狭い範囲にまとまりやすくなります。これが「同じ型にハマる(モード崩壊)」の見た目の例です。いっぽう下段はVerbalized Sampling(VS)を使います。これは「5つの説明文を、それぞれの確率つきで出して」と頼む方法で、AIがもともと頭の中に持っているいろいろな言い回し(分布)を外に引き出します。出てきた説明文は「絵本風の水彩」「ネオンが光るレトロフューチャー」「バロック絵画」「地球が迫るシネマティック」「双子の太陽の峡谷を駆ける」など、作風(スタイル)も場面(シーン)もガラリと違う内容になります。その多彩な説明文を画像生成AIに渡すと、仕上がる絵も水彩・ネオンSF・油絵・映画風アクションと、表現の種類と物語の舞台が大きく広がるのがひと目で分かります。要するにFig.5は、頼み方を「1本だけ」から「複数+確率」に変えるだけで、ことばのバリエーションが増え、それがそのまま画像のバリエーションへと波及することを示したデモです。ここに並んだ5枚は代表例で、いつも同じ5枚が出るという意味ではありませんが、Directは収束しやすく、VSは散らしやすいという傾向の違いを直感で理解できるように構成されています。Credit:Verbalized Sampling: How to Mitigate Mode Collapse and Unlock LLM Diversity

今回の研究が示した最大のポイントは、「AIへの質問の仕方を少し工夫するだけで、答えの幅を大きく広げられる」ということです。

実験では、言語化サンプリング法方式によって調整前のAIモデルが持っていた創造性の約3分の2(66.8%)を取り戻しました。

一方で、従来の通常プロンプトではその4分の1程度しか引き出せませんでした。

つまり、調整の過程で埋もれていたAIの「隠れた個性」の多くを再び表に出すことに成功したのです。

そして何より、この成果を実現するために必要なのは、たった一文の指示だけという点です。

これまで似た成果を得るには、長時間の試行錯誤や複雑な設定が必要でしたが、言語化サンプリング法ではそれをシンプルに置き換えることができます。

良く言えば「プロンプトの工夫を支える新しい基礎技」、悪く言えば「既存のプロンプトエンジニアリング殺しの技法」と言えるでしょう。

では、この手法はどんな場面で役立つのでしょうか。

創作やブレインストーミングの場面では、一度の質問で多様なアイデアをAIから引き出せます。

例えば、小説のプロットを相談すれば、1パターンではなく5通りの異なる展開を提案してもらえるかもしれません。

研究応用の面でも、AIが仮説の生成や社会シミュレーションなどでより広い視点を提供できる可能性があります。

さらに、機械学習用のデータを作る際にも、言語化サンプリング法によってより多様なデータセットを得られ、学習の質を高める助けとなるでしょう。

もちろん、この手法にも注意点があります。

言語化サンプリング法はあくまで既存モデルの中にある知識を引き出す方法であり、モデルそのものを賢くしたり、新しい知識を加えたりするものではありません。

また、すべての質問に多様性が必要なわけではありません。

数学のように答えが一つしかない問題では、複数の候補を出す意味は薄くなります。

さらに、モデルによっては複雑な指示を「規則違反」と判断して拒否することもあるため、その場合はシステム設定で工夫が必要です。

それでも、この簡単な方法が示した効果は大きく、今後のAI活用の幅を広げる重要な成果だと言えるでしょう。

研究チームは言語化サンプリング法のコードを公開しており、誰でもこの方法を試すことができます。

今後は、より複雑で多様な分野で言語化サンプリング法を試し、AIが本来もつ多様性をどこまで引き出せるかを検証していく予定です。

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