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音楽トレーニングを受けてきた人は目隠し足踏みでふらつかないと判明 / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
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音楽家は「目隠し&足踏み」でふらつかない

2025.11.27 06:30:16 Thursday

音楽家たちは膨大な時間を演奏の練習に費やし、聴覚や触覚、視覚、運動制御といった複数の働きを同時に使っています。

こうした多感覚のトレーニングが、実は自分の身体が今どこにあるのかをつかむ空間認知までも鍛えている可能性があります。

カナダのモントリオール大学(University of Montreal)を中心とする研究チームは、音楽家と非音楽家を完全に目隠しした状態で足踏みさせる実験を行い、その身体の“ズレ方”を詳しく比較しました。

その結果、音楽家は音があるときも、まったく音がないときも、身体の位置をより正確に保てることが明らかになりました。

この研究成果は2025年11月1日付の『Cortex』誌に掲載されています。

Musicians drift less in blindfolded walk: Could musical training be utilized in cognitive rehabilitation? https://medicalxpress.com/news/2025-11-musicians-drift-blindfolded-musical-cognitive.html
Musical training shapes spatial cognition https://doi.org/10.1016/j.cortex.2025.10.002

音楽経験が空間認知能力を高めると判明

私たちは歩くときや立ち止まっているとき、自分の身体がどこにあるのかを自然に把握しています。

これは空間認知と呼ばれ、耳の奥にある平衡のセンサーや、筋肉や皮膚から伝わる身体の手掛かり、さらに目や耳の情報を組み合わせることで成り立っています。

とくに聴覚は、暗い場所で誰かの声がすればその方向で自分の向きを確かめられるように、空間の“基準”として働きます。

研究者たちは、音楽家が長年の訓練で、こうした多感覚の情報をより正確に扱えるようになっている可能性に注目しました。

そこで今回の研究では、音楽家が持つ多感覚を統合する力が、身体の位置の安定性にどれだけ影響するのかを検証するための実験が行われました。

研究には、平均16.5年の経験をもつ19名の音楽家と、学校教育以外の音楽経験がない19名の非音楽家が参加。

参加者は部屋の向きを教えられないまま完全に目隠しされ、毎秒2歩のテンポで60秒間その場で足踏みしました。

足踏み後には、どれだけ前に移動したか、どれだけ体の向きが変わったか、そして音が提示された条件では音源の方向からどれくらいズレたかが詳しく測定されます。

音がある条件では、正面の0度、斜め45度、真横の90度から55dBの音声信号が流され、音が空間の目印としてどの程度使われるかが調べられました。

こうした実験の結果、音がない条件では両群の回転量はほぼ同じだったものの、前へのズレの量だけ音楽家のほうが有意に小さいことが分かりました。

さらに音がある条件では、移動距離や回転量は両群でほぼ同じでしたが、音源に対する方向のズレだけ音楽家がどの角度でも少ないという結果が示されました。

では、どうしてこのような結果になるのでしょうか。

次ページ音楽家はなぜ暗闇でも“ふらつかない”のか

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