マスケット弾を太陽電池に変える、二段階の錬金術

さて、実際の工程です。
大きく分けて二つのステップで進みます。
まず最初のステップは、弾丸を溶かして棒状に鋳直し、それを電極として使うというものです。
研究チームはまず380℃で弾丸を溶かし(鉛の融点は327℃なので、その少し上の温度です)、10ミリ×150ミリの細長い棒に鋳直しました。
400年前の弾丸が研究室でドロドロに溶けていく光景は、それだけでちょっとした絵になります。
具体的には、アセトニトリルという液体にヨウ素を溶かし込んだ溶液に、この鉛の棒を二本並べて浸し、15ボルトの電圧をかけます。
すると電気の力で鉛が少しずつ溶け出し、ヨウ素とくっついて、鮮やかな黄色のヨウ化鉛が電極の表面に析出してくるのです。
黒ずんだ古い鉛が、目の前で黄色く変身していく様子を想像すると、なかなか魔法のようです。
この方法の優れているところは、水をほとんど使わないこと。
従来のやり方だと、硝酸で鉛を溶かして水で洗う工程があり、ヨウ化鉛を1キロ作るのに水を50〜70リットルも使い、有毒ガスまで出していました。
しかも従来法は、鉛が溶けきるまで常温で約35日もかかります。
それが新手法では、電気化学変換の段階がほぼ室温で進み、鉛を含む排水も大幅に減らしながら、流した電気の94%がきちんとヨウ化鉛作りに使われるという、きわめて効率的なプロセスに進化しました。
研究チームはさらに、電極の表面を定期的に削ったり、プラスとマイナスの極性を入れ替えたりといった細かな工夫を積み重ね、同じ時間で得られるヨウ化鉛の量を約3倍(204%増)にまで引き上げることにも成功しています。
ただしこの段階では、まだ不純物が残っています。
そこで第二段階。
ここで登場するのが「逆温度結晶化」という、直感に反する不思議な現象です。
ふつう私たちは、物質は冷やすと固まると思っています。
水を冷やせば氷になるし、飴を冷やせば固まる。
ところがヨウ化鉛に別の分子を混ぜてペロブスカイト構造の原料液にし、特殊な溶媒(GBL)に溶かすと、温めれば温めるほど結晶が出てくるという逆の現象が起きるのです。
研究チームは25℃から120℃までじわじわ時間をかけて加熱し、5ミリから10ミリほどの大きな黒い結晶を育てていきました。
結晶というのは面白い性質を持っていて、きれいに成長していく過程で、不純物を自然とはじき出していきます。
整然と並ぼうとする原子の列に、混じり者は入れてもらえないのです。
結晶化そのものが、壮大な自然のろ過装置として働くわけです。
この工程を経た鉛は、市販の最高級品と比べても遜色なく、項目によってはそれを上回るほどの純度にまで磨き上げられました。
ちなみに、この精製ステップを飛ばして未精製のヨウ化鉛のまま太陽電池を作ると、効率はたった5%ほどまで落ち込むことも確認されています。
つまり今回の成果は、「電気化学で汚れた鉛を黄色い粉に変える」ステップと「結晶化で徹底的に磨き上げる」ステップ、その二つがそろって初めて成立する技術なのです。
こうして生まれ変わったヨウ化鉛で、研究チームは実際にペロブスカイト太陽電池を組み立てました。
そして、市販の最高純度原料で作った太陽電池と並べて性能を比較。
結果は、弾丸製の最高性能セルで効率21%、市販原料製で約22%。
統計的に見て「差があるとは言えない」という結論でした。
つまり、400年前のボロボロの弾丸から作った太陽電池と、市販の最高級原料から作った太陽電池が、ほぼ同じ性能だったのです。
(※ちなみに世界最高レベルのペロブスカイト太陽電池の効率は26%台後半なので、21%というのは研究室レベルとして十分に競争力のある数字です。)
「お遊びの実験」ではなく「真剣な技術」であることが、この数字からも伝わってきます。
ですが、実はこの研究の本当の価値は、この数字そのものではなく、別のところにあります。





























![よーく聞いてね!3つのヒントで学ぶ!どうぶつカード ([バラエティ])](https://m.media-amazon.com/images/I/51zT3OcliFL._SL500_.jpg)






















