カオス系の中に「秩序の核」が存在することを量子AIが発見――実証にも成功
カオス系の中に「秩序の核」が存在することを量子AIが発見――実証にも成功 / Credit:Canva
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カオス系の中に「秩序の核」が存在することを量子AIが発見――実証にも成功 (3/5)

2026.04.27 18:45:29 Monday

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3つのカオスに挑む――「縞模様」「渦巻き」「ルールなしの乱流」

研究チームは量子AIによる「秩序の核(Q-Prior)」の実力を確かめるために、3段階のカオス問題の予測テストを用意しました。

テスト1:揺れる縞模様を追え

3つのカオスに挑む――「縞模様」「渦巻き」「ルールなしの乱流」
3つのカオスに挑む――「縞模様」「渦巻き」「ルールなしの乱流」 / (A)時間経過に伴う速度場の変化と誤差マップ、(B)速度の確率密度関数、(C)エネルギースペクトル、(D)相空間上の不変測度の密度、(E)時間自己相関。Q-Priorなしモデルでは時間とともに縞模様がずれていく様子が、Q-Priorありでは保たれている様子がわかります。Credit: Maida Wang et al., Science Advances(2026)

最初は、時間とともに揺れ動く「縞模様」の予測です。

風になびくカーテンの縞を想像してください。

風が吹くたびにシマの位置は変わりますが、「縞っぽさ」自体は保たれています。

Q-Priorなしのモデルは最初こそ縞を再現しましたが、時間が経つにつれてじわじわとずれていきました。

Q-Priorありでは500ステップのロールアウトでも統計構造を保ち、最初の100ステップで予測誤差が約17%減少しました。

テスト2:溶けゆく渦巻きを保て

3つのカオスに挑む――「縞模様」「渦巻き」「ルールなしの乱流」
3つのカオスに挑む――「縞模様」「渦巻き」「ルールなしの乱流」 / 同じ初期状態から出発した正解データ(上段)、Q-Priorあり(中段)、Q-Priorなし(下段)の速度場スナップショットを、6つの時刻で横に並べています。Q-Priorなしでは渦の構造が早く崩れてぼやける一方、Q-Priorありでは正解に近い構造が保たれる過程が時系列で見られます。Credit: Maida Wang et al., Science Advances(2026)

次はぐるぐる回る2次元の渦巻き流。

ラテアートを思い浮かべてください。

Q-Priorなしでは模様が時間とともにぼやけてノイズの海に溶けましたが、Q-Priorありでは渦巻き構造が長時間保たれました。

テスト3:ルールブックなしの乱流

3つのカオスに挑む――「縞模様」「渦巻き」「ルールなしの乱流」
3つのカオスに挑む――「縞模様」「渦巻き」「ルールなしの乱流」 / (A)3D乱流チャネル流シミュレーションの瞬間速度場。赤い楕円で2D断面の切り出し位置を示しています。(B)QIMLモデルが生成した合成乱流流入条件。Credit: Maida Wang et al., Science Advances(2026)

最後は3次元の乱流です。

激しく流れる川を真横からスパッと切って、その断面の水の動きだけを予測するようなもの。

しかもこの断面だけの動きを支配する方程式は存在しません。

さらにこのテストでは初めて、IQM社の超伝導量子プロセッサという本物の量子ハードウェアが投入されました。シミュレーターではなく、ノイズもエラーもある実機です。

結果はQ-Priorなしのモデルは全滅。

最先端のAIモデル(FNOやMNO)も破綻しました。

しかしQ-Prior付きのものだけが安定な長期予測を維持したのです。

使った量子ビットは10〜15個、パラメータは300未満。

10万個以上を必要とした従来手法とは桁違いの身軽さです。

しかも本物の量子マシンで作ったQ-Priorと、シミュレーターで作ったQ-Priorの性能がほぼ同等でした。今のノイズの多い量子コンピュータでも実用的に使えることを示す重要な結果です。

メモリ面でも、500メガバイトの生データがわずか約2.3メガバイトに圧縮されています。

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