狙いは「巨大鳥モア」の復活、だが「代理の鳥」がいない
同社がこの技術を重視する理由の一つが、サウスアイランドジャイアントモア(学名:Dinornis robustus)の復活計画です。
モアはかつてニュージーランドに生息していた飛べない巨大鳥類で、サウスアイランドジャイアントモアは高さ3メートルほどに達したとされます。
同社によると、モアの卵はニワトリの卵のおよそ80倍、エミューの卵のおよそ8倍の体積があったと推定されています。
ここで問題になるのが、「誰に産ませるのか」という点です。
哺乳類であれば、近縁種を代理母として使うという発想が出てきます。
しかし巨大な鳥類の場合、卵そのもののサイズが大きな壁になります。
現生の鳥の中に、モアほど大きな卵を産み、胚を育てられる代理種は存在しません。
つまり、仮に古代DNAを解析し、現代の鳥の細胞を編集してモアに近い特徴を持たせられたとしても、その胚を最後まで育てる「場」がなければ、復活計画は先に進めません。
同社は、この問題を解決するために、サイズを自由に拡張できる人工卵が必要だと考えています。
同社の説明では、人工卵は特定の種に限定されず、卵の大きさに合わせて設計できるプラットフォーム技術です。
将来的には、ニワトリよりはるかに大きな卵を必要とする種にも対応できるよう、より大きなバージョンの開発も進めているといいます。
人工卵に関する概説映像がこちら。音量に注意してご視聴ください。
科学者は評価しつつも慎重
一方で、外部の科学者たちはこの成果に慎重な見方も示しています。
理由の一つは、今回の技術がまだ査読付き論文として公開されておらず、詳細なデータを第三者が検証できないことです。
ノースカロライナ州立大学の幹細胞生物学者ポール・モズディアック氏は「この技術が非常に重要なものかもしれない」としながらも、「データがなければ本当の影響を判断することは難しい」と述べています。
さらに、生命倫理の面でも課題があります。
ニューヨーク大学グロスマン医学部の生命倫理学者アーサー・カプラン氏は、仮にモアに似た大型鳥を作れたとしても、その動物がどのような環境で生きるのかが大きな問題だと指摘しています。
絶滅した種が暮らしていた過去の環境は、現在では大きく変わっています。
捕食者、植生、人間活動、病原体、生態系のバランスは、当時と同じではありません。
復活させる技術ができたとしても、その生き物をどこで、どのように生かすのかという問いは残ります。
その一方で、この技術が絶滅危惧種の保全に役立つ可能性については、比較的前向きな見方もあります。
飼育下で繁殖が難しい鳥類や、卵がうまく育たない種に対して、人工卵が胚を救うための補助的な環境になるかもしれないからです。
また、生きている個体から精子や卵細胞、あるいは遺伝資源を保存しておき、将来の保全に活用する取り組みにもつながる可能性があります。
シェフィールド大学で鳥類の生殖生物学を研究するニコラ・ヘミングス氏は、すでに失われたものを取り戻すことよりも、今あるものを守ることに関心があると述べています。
こうした指摘は、人工卵という新技術の期待と限界の両方を指し示すものかもしれません。







































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