
・トイレなどで手を乾かすために使うジェット式ハンドドライヤーは、細菌を撒き散らすとされる研究結果がある
・実際の現場での影響を調べるため病院のトイレで、ジェット式ハンドドライヤーとペーパータオルでの細菌の分布の違いが研究される
・ジェット式ハンドドライヤーは、トイレ内の細菌の量を増やすため、病院での使用は控えたほうがよいという結果
トイレで手を洗った時、乾かすために使うジェット式ハンドドライヤー。機械に接触することもないため衛生的で、ペーパータオルのように使い捨てられることもなく、環境にも優しいというイメージです。しかし、研究によるとこのイメージは間違っているかもしれません。
リーズ大学率いる国際チームの研究によると、ジェット式ハンドドライヤーを病院のトイレ内で使うと、ペーパータオルを使う場合に比べて細菌が撒き散らされるため、使用は控えたほうがよさそうです。研究は“Journal of Hospital Infection”で発表されました。
Environmental contamination by bacteria in hospital washrooms according to hand-drying method: a multi-centre study
https://www.journalofhospitalinfection.com/article/S0195-6701(18)30366-9/
研究室で行われた先行研究では、ジェット式のハンドドライヤーがペーパータオルや温風式のハンドドライヤーに比べて細菌を撒き散らすことを明らかにしています。では、特に細菌数が多いと思われる病院ではどうなるのでしょうか?
今回の研究では、英国とフランス、イタリアの病院内のトイレを使い、12週間以上に渡って実験が行われました。調査したのは、ペーパータオルとジェット式ハンドドライヤーを設置した場合の、それぞれの床や空気、トイレの表面における病原菌の数や有無です。調べた主な細菌は、黄色ブドウ球菌、エンテロコッカス、腸内細菌で、いずれも感染すると病気を引き起こす原因となります。

実験の結果、ジェット式ハンドドライヤーを使った場合、国の異なる3箇所の病院すべてで細菌の数が有意に増えていました。リーズとパリの病院では床で見つかった細菌の量は5倍にもなっていました。また、リーズで見つかった黄色ブドウ球菌には多剤耐性菌(MRSA)も含まれており、ハンドドライヤー表面からペーパータオルディスペンサーの表面の3倍の頻度と量で細菌が見つかっています。
手を綺麗にするための手洗いですが、乾かし方によっては感染のリスクが増える可能性があるようです。そして、それが病院ならなおさらでしょう。そもそも、トイレを使った全員が適切に手を洗って細菌を除去していたら、細菌が吹き飛ばされることもないのですが、その実現は難しいと思われます。どちらにせよ、病院のトイレではペーパータオルを使用したほうが院内感染のリスクは減りそうです。個人では、常に清潔なハンカチを所持していおくことが自衛につながるでしょう。