観測史に残る猛烈な風が吹いた場所
7.最速の斜面下降風が吹く「南極大陸」

南極大陸では、内陸部にある冷たく重い空気が、海岸へ向かって一気に斜面を下ることがあります。
南極のコモンウェルス湾にあるデニソン岬では、1912年に時速約270kmの暴風が観測されました。
これは、斜面を下る風としてギネス世界記録に認定されています。
この地域では、1日に観測される最大風速の年間平均値も時速約71kmに達します。
強風は数週間にわたって吹き続け、吹雪のような状態を引き起こすこともあります。
ただし、南極で正確な風速を測ることは容易ではありません。
観測装置が凍りついて停止したり、風で吹き飛ばされたりするからです。
超音波式の風速計も、舞い上がった雪によって誤った数値を示す場合があります。
実際の南極には、観測記録に残っていないさらに強い風が吹いている可能性もあります。
8.竜巻以外で最速を記録した「オーストラリアのバロー島」

オーストラリア北西部にあるバロー島は、竜巻に伴わない風として、観測史上最速の記録を持っています。
1996年、熱帯低気圧オリビアが島を通過した際、無人の気象観測所が時速253マイル、約407kmの風を記録しました。
記録に採用されたのは、3秒間の平均風速です。
それまで世界記録を保持していたアメリカのワシントン山を上回り、現在もギネス世界記録として認定されています。
バロー島は、オーストラリア有数の石油・天然ガス開発拠点です。
しかし同時に、自然保護区としても重要な場所です。
島にはメガネウサギワラビーやウミガメ、オーストラリア最大のトカゲであるペレンティーなど、希少な動物が生息しています。
世界最速級の風が吹いた島が、産業拠点と野生動物の保護区という二つの顔を持っているのです。
9.年間100日以上も暴風が吹く「ワシントン山」

アメリカ・ニューハンプシャー州にあるワシントン山は、標高約1830mの山です。
1934年、この山の山頂では時速231マイル、約372kmの突風が観測されました。
この記録は、20世紀の大半にわたって、地上で直接観測された世界最速の風として知られていました。
現在はバロー島に記録を更新されていますが、ワシントン山が世界有数の強風地帯であることに変わりはありません。
年間平均風速は時速約56kmに達します。
さらに山頂では、時速約121kmを超えるハリケーン級の風が、年間100日以上も吹きます。
ワシントン山のあるホワイト山地は、複数の低気圧が通過しやすい位置にあります。
大西洋側の低気圧と内陸部の高気圧がぶつかり、山の地形によって空気の流れが狭められることで、山頂付近の風が猛烈に加速するのです。
観光客が訪れる山でありながら、山頂では突然、極地のような環境に変わることがあります。
10.時速480kmの風が推定された「オクラホマ州の竜巻」

これまでに確認された最高クラスの風速は、アメリカ・オクラホマ州で発生した竜巻の内部で観測されています。
1999年、オクラホマシティ郊外のブリッジクリークを襲った竜巻では、上空の風速が時速約300マイル、約483kmに達したと推定されました。
この値はドップラー・レーダーによって測定されたものです。
それ以前の記録は、1991年に同州レッドロックで発生した竜巻の時速約460kmでした。
さらに2013年にエルリノ付近で発生した竜巻は、幅が約4.8kmに達し、風速も時速480kmに迫ったとされています。
ただし、これらの数値は地上の観測装置が直接測定したものではありません。
世界気象機関は、ドップラー・レーダーによる竜巻内部の風速を、地上で観測された公式な風速記録としては認めていません。
そのため、「公式に観測された最速の風」という記録は、現在もバロー島が保持しています。
竜巻の内部に観測装置を置いても、装置そのものが破壊されたり吹き飛ばされたりする可能性があります。
人類は時速480kmに迫る風の存在を捉えていますが、それを地上で直接測定することは、現在でも非常に難しいのです。































