残り続ける青緑の光は、何のためにあるのか

こうした特徴から、この蛍光は何かを伝える合図として働いている可能性があると研究チームは考えています。
共著者でマックス・プランク化学生態学研究所のマルティン・カルテンポート氏は「夜や、とくに込み入った環境でサンショウウオどうしが互いを見つける助けになるか、追加の防御のサインとして働くのかもしれません」と述べています。
人がこの光をはっきり見るには紫外線のライトが必要ですが、ほかの動物はもっと弱い自然の光でも感じ取れるかもしれません。
ファイアサラマンダーが活動する薄暗い森には月や星の光が届き、満月の光は昼の光にくらべて紫外線や紫の光の割合が比較的高いためです。
ただし、この光がサンショウウオや敵の目に実際に見えているのか、何の役に立っているのかはまだ分かっておらず、仲間との合図や繁殖相手の見分け、毒の警告を強める働きといった考えは、いずれも仮説の段階です。
光る物質の正体も突き止められておらず、共著者のサルバドール・カランサ氏は「この種ではこれまで知られていなかった分子であることを、すべてが示しています」と話しています。
チームは現在、候補となる物質を化学的に調べているところです。
共同筆頭著者のアンドレス・ブルネッティ氏は、何十年も化学的に調べられてきた分泌物から光る物質が見つかったことに驚いたといいます。
筆頭著者のベルナト・ブリエル氏も「もっとも身近な生き物でさえ、新しい道具で観察して初めて明かされる秘密を隠していることがある」と語っています。
月明かりの森でファイアサラマンダーの分泌物が付いた場所には、人の目には見えない青緑のしるしが、丸一日たっても残っているのかもしれません。
私たちが見てきた黄色と黒は、この生き物がまとっている色のほんの一部にすぎなかったのです。
ひとまず私は、自分の部屋にブラックライトを当てる勇気がまだ出ません。
ここからは、ファイアサラマンダーをもっと知りたい人へ
ファイアサラマンダーとは、どんな生き物なのか

ファイアサラマンダーは全長15〜25cmほどで、ヨーロッパにすむサンショウウオのなかまでは最大級の大きさです。
模様の入り方は地域によって違い、黄色の縞が目立つものや、オレンジや赤が混じるものもいます。
昼のあいだは倒木や石の下に隠れていて、夕方から夜にかけて動き出します。
雨の日には昼でも姿を見せ、ミミズやナメクジ、クモなどを食べます。
ふえ方も独特で、多くは卵ではなく、幼生を小川や池に産み落とします。
寿命はとても長く、ドイツの博物館では50年以上生きた記録があります。
一方で、外から持ち込まれたカビの病気によって各地で数が減り、2023年には国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「危急」に引き上げられました。




