「シュレーディンガーの猫」への遠い道のりの一歩
今回の実験は、シュテルン=ゲルラッハ実験と同じ原理を、原子ではなくセンチ大の物体で見せたことになります。
装置の重さは、これまでスピンと機械の動きを結びつけてきた実験の物体の、およそ1億〜10億倍です。
トゥワムリー教授は「小さな量子の効果から、大きな古典的な反応を示した」と表現しています。
ここで注意したいのは、今回見えた揺れそのものは、ふつうの物理で説明できる「古典的な」動きだという点です。
装置が「いくつもの場所に同時にある」量子の状態になったわけではありません。
次の課題は、ふつうの揺れを起こす段階から、本当に量子的な揺れの状態をつくる段階へ進むことです。
その足がかりとして期待されているのが、NV中心を含むダイヤモンドです。

共著者で博士課程の学生のキム・デヒさんによると、NVダイヤは性質がよく分かっていて、扱いやすい素材です。
キムさんは、室温でも重ね合わせの状態をほかの仕組みよりずっと長く保てる点も強みだと話します。
この装置は、暗黒物質や重力波などをとらえる、きわめて精密なセンサーづくりにつながる可能性もあります。
トゥワムリー教授は「基準をナノメートルからセンチメートルへ押し上げている」と語ります。
そして、あと1桁進めば、シュレーディンガーの猫を現実に見られるだろうと見通しを述べています。
シュレーディンガーの猫とは、1935年に物理学者のシュレーディンガーが発表した、猫を使った有名な思考実験です。
箱の中の猫の生死を、放射線を出すかどうかが五分五分の原子と結びつけると、計算の上では猫が「生きている」と「死んでいる」の重ね合わせになってしまう、という話です。
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目に見えないほど小さな無数の磁石が、光の合図に合わせて切り替わり、宙に浮いた板をブランコのようにこぎ続けていたのです。
次にダイヤの指輪を見かけたら、中の電子たちがちゃんと働いているか、つい耳を澄ませたくなりそうです。
ここからは、窒素-空孔中心をもっと知りたい人へ
窒素-空孔中心とは、光を当てると赤く光る、ダイヤモンドの中の小さな欠陥です

NV中心を含むダイヤモンドにレーザーを当てると、ダイヤは赤く光ります。
この光は、NV中心の中にある電子がレーザーを受けて、よりエネルギーの高い状態に持ち上げられることで生まれます。
また、産業技術総合研究所(産総研)は、NV中心1個を使ったダイヤモンド量子センサーで、世界最高の感度を実現したと発表しています。




