■アメリカに戦時中の船が200隻近く打ち捨てられたままになっている湾が存在する
■地元小学生の研究により、その船が今だに動いている「幽霊船団」であることが分かる
■船はその海域の生態系の保全に貢献しており、その場所が海洋生物保護区として指定される可能性がある
米国メリーランド州のマローズ湾には、今でもおよそ200隻もの軍艦が打ち捨てられています。それらの軍艦は、独立戦争当時のものをはじめ、南北戦争、そして第一次、第二次世界大戦の際に沈められたものまで様々。それらの船は「幽霊船団」として知られ、今では草が蒸し、木が茂り、野生動物のすみかとしてその役割を果たしています。
しかし、その「人工の生態系」も、ずっと同じ状態を保っているわけではありません。12月13日に行われたアメリカ地球物理学連合の年次会合で、その「幽霊船団」が長い年月をかけてどのように変化をしていったのかが発表されました。
実はこの研究を行ったのは、地元の学校に通う4人の小学生。彼らは学校行事でマローズ湾に訪れたことがきっかけで、沈んだ多くの船の存在を知り、川の底で何が起こっているのかに興味を持ったと語っています。
彼らは、沈んだ船が写っている年代別の航空写真を頼りに、どの船がどの方向に動いたのか、あるいは腐ってしまったのかを調査しました。調査の結果、いくつかの船は同じ場所にとどまっていないことが分かり、そのほとんどが東の方向へと進んでいることが明らかとなりました。そのため、ここの生態系は常に変化を強いられているのです。
中にはかなりの長距離を移動していたものもあります。移動の要因としては、暴風雨や洪水、土壌侵食などの様々な自然現象が船を動かす力となって働いていたことが考えられます。
船中の複雑な構造により、沈んだ船が多くの魚や動物の生息場所となっていることから、その区域では豊かな生態系が保全されており、アメリカ海洋大気庁がその海域を海洋生物保護区として指定することを検討中であるとのこと。
しかし、今回小さな研究者たちが明らかにしたように、幽霊船団は一定の場所にとどまっているのではなく、今だに「動き」続けてその生態系を変化させているため、その評価にはさらなる調査が必要となりそうです。
船としての役目を終えてなお、生命を乗せて進み続ける幽霊船団。彼らの目的地は、一体どこなのでしょうか。