■機械学習のアルゴリズムは、数学が本来備えている制約に縛られる
■機械学習は、アルゴリズムでは真偽が導き出せない「決定不能な問題」を孕んでいる
■機械学習はすべての問題を解決できる万能の技術ではないので、「健全な謙虚さ」をもって扱うことが重要
この世のすべての謎を解くことは不可能です。たしかに、AIがどんな難問も解決してくれるように思える現代では意外に思えるかもしれませんが、これは真実でしょう。
数学や人工知能を専門とする研究者の国際チームが、どんなに巧みに練られたアルゴリズムでも、数学が本来備えている制約に縛られることを明らかにしました。論文は1月7日付けで「Nature Machine Intelligence」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s42256-018-0002-3
すべてのAIは数学的制約を受ける
筆頭著者であるカナダ・ウォータールー大学のシャイ・ベン・デイビッド氏によると、数学は「すべての事象が証明可能というわけではない」という「殻」に閉じ込められている運命にあるそう。そして、AIや機械学習も同じ運命を共有しているというのです。
このこととよく結び付けられるのが、オーストリアの著名な数学者クルト・ゲーデルが1930年代に提唱した「不完全性定理」です。「数学は自己の矛盾性を証明できない」ことを示した彼の理論は、彼はすべての数学的問いが解決できるわけではないことを示唆しています。
ベン・デイビッド氏らは、機械の「学習力」も、証明不可能な数学の制限を受けると説明しています。つまり数学は、アルゴリズムでは真偽が導き出せない「決定不能な問題」を、AIに与えているということです。