最先端のコンピューターでさえ逃れられない
研究チームは、”estimating the maximum” (EMX) という機械学習の問題を調査しました。つまり、ウェブサイトにもっとも頻繁に訪れる人を標的にした広告を表示しようとしても、どんな訪問者が訪れるかをあらかじめ知ることはできないという問題です。
この場合、解かれるべき数学的問題は、「PAC学習(確率的近似的学習)」という機械学習の枠組みとの類似点を持つ一方で、「連続体仮説」という数学的パラドックスとも似ています。この仮説は、「不完全定理」と同様に証明不可能な数学に関係する仮説で、EMXのような状況においては、機械学習は少なくとも仮説上は、同じ壁にぶつかる可能性があるようです。
もちろん、EMXのケースのみから、機械学習が他の状況でも同種の問題に対処しなければならないと、単純に結論づけることはできません。とはいえこの新説は、最先端のコンピュータ科学でさえ、数学の奥深い本質を逃れることは不可能だということを、私たちに思い出させてくれます。
現在、機械学習は、数学の一分野として成熟を遂げ、証明不可能な課題に挑む分野にも取り込まれつつあります。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで社会に革命を起こし続けている機械学習のアルゴリズムですが、それがすべての問題を解決してくれる「万能の神」ではないことを、私たちはこの研究から学ぶことができます。「健全な謙虚さ」をもって、この便利な技術を活用することが大切なのです。