
■世界で初めて月面での発芽に成功した植物が、昨日水曜日に早くも死んでしまった
■月の昼と夜は14日サイクルで変動し、現在は夜の期間に当たるため、残された植物やハエの卵も生存が絶望的となっている
■月面の地質調査をおこなう探査車「玉兔2号」は、過酷な気温への対策として「ラジオアイソトープ・ヒーター・ユニット」による熱供給を行なっている
今月3日に月の裏側に到着した、中国の無人探査機「嫦娥4号」。そして、今週火曜日には、探査機内部に積まれていたカプセルの中で、世界で初めて月面での植物の発芽に成功していました。
しかし昨日の水曜日に、月の過酷な環境に耐え切れず、早くも死んでしまったようです。
発芽した「綿花」の植物は、月の寒暖差の対策として、温度が一定に保たれたカプセルの中で保管されていましたが、太陽光の不足が致命的でした。
月の気候は予想以上に厳しく、日の当たる「昼期間」と日の沈んでいる「夜期間」とを14日サイクルで変動します。日中の間は127℃まで上昇しますが、夜になると一転してマイナス170℃まで一気に落ち込みます。
現在、月の裏側は日の当たらない夜の期間で、再び太陽光が戻ってくるのは今月の末になるとのこと。この過酷な環境は、カプセル内の植物だけでなく、月面上の地質調査を行なっている探査車「玉兔2号」にも大きな障壁となっている模様。
「玉兔2号」は厳しい寒さへの対策として、搭載された「ラジオアイソトープ・ヒーター・ユニット(radioisotope heat unit =RHU) 」による熱供給を行なっています。「RHU」は、放射性崩壊によって熱を発電する小型の装置で、太陽からの日射量の少ない深宇宙探査などには必要不可欠。
また、「嫦娥4号」も厳しい夜への準備として、今月13日にはスリープモードに入っています。
「中国国立宇宙管理(CNSA= China’s National Space Administration)」は「カプセル内に残された他の植物の種やショウジョウバエの卵なども、日光の不足と厳しい気温に2週間も晒されれば、生存は不可能である」と報告しています。
短い命でしたが、世界最初の月面発芽に成功した植物として歴史に名を残した「月の芽」。芽は死んだものの、持ち込まれた別の生命体が月で成長し突然変異して…なんていう某昆虫SF漫画のような展開にならないことを祈ります。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/13532