宇宙の死体は「バイオハザード」
そこでは、宇宙飛行士は遺体をバイオハザード(生物災害)として扱う必要があり、自らでその保存場所について判断しなければならないとされています。クルーの遺体のために特別に設けられたスペースなどは存在していないのです。そのため、遺体はまるでゴミのニオイを最小限に抑えるかのように、圧力のかかったスーツに入れられ、気温の低い場所に保管される可能性が高いといえます。
これを聞いて「それはあんまりだ」と思った方も多いのではないでしょうか。NASAもその考えに同意しており、遺体処理の方法を探ってきました。中には、液体窒素によって遺体をフリーズドライして、細かい組織にまで分解してしまおうといった提案もありました。そうすれば、遺体は宇宙船内の場所を大きくとることはありません。
1982年に公開された映画『スタートレックII カーンの逆襲』の中でスポックが亡くなった際、カーク船長やクルーがそうしたように、遺体を宇宙へと投げ放ってはいけないのでしょうか?この点、ロケットなしで宇宙へと遺棄された死体は、宇宙船の後を追う軌道をたどると考えられ、もし長期の移動により多くの人が亡くなった場合は、死体が列を作ってしまう「逆葬列」の状態になってしまうでしょう。
地球では当たり前の行動が、宇宙で通用しないことは誰しもが分かっていることです。自由に食事をすることや、運動をすること、排泄までもが宇宙空間で制限を受けます。そして何よりも、そうした日常生活が自由にできるようになる前に、私たちは宇宙で「死ぬ方法」について最優先に考えなければならないのかもしれません。