「共感」に関する様々な研究
共感には、「目」が大きな役割を果たしているという説があります。発達した「心の理論」を持つ私たち人間にとって、他者が「どこを見つめているのか」とったことは社会的な知性を育む上で重要です。他の動物は同じ種の行動を観察するとき、目ではなく「頭全体」の動きを見ています。
また、「進化」といった観点から共感をみたとき、人間が利他的な行動を発展させてきたのは、そこに共感から生まれる社会的な利益があったからに他なりません。共感の生物学的なインスタンス化は、生物がは虫類から哺乳類へと進化する過程において現れています。共感は現在、「皮質」を含む脳の複雑な構造と関連していると考えられています。
さらに、共感を「ミラーニューロンシステム」と結びつけて考える説もあります。このシステムが初めて脳内で確認されたのは「マカクザル」であり、他の個体の行動を見るだけで、自身の脳内の活動電位を発生させるといったものを指します。人間についても同様のシステムが存在し、これが「共感」において多くな役割を果たすものであると考えられているのです。
いずれにせよ、人間の中には共感力が高い人もいれば低い人もいます。これは、共感が「有限」のリソースであることを示しており、マズローのいう「5段階の欲求(生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求)」が満たせない場合は、より広い範囲への共感能力の獲得が難しくなる可能性があります。アフリカの飢餓に苦しむ子どもが、気候変動に対して大きな関心を寄せないことは無理もありません。
逆に、それらすべてが十分に満たされている人ほど強い利他主義的な共感を示すことができます。地球上で最も豊かな「大富豪」の1人であるビル・ゲイツが慈善活動に力を入れているのも、彼がすでに欲求を満たすことができているからであるともいえるでしょう。