国家にも「共感力」は必要である
とはいえ、共感能力は「鍛える」こともできます。ある小学校では、共感能力を向上させるためのシステマチックな取り組みとして、カリキュラムにストーリーテリング(何かの説明に物語を用いる)や動画作成、グループディスカッションを取り入れています。
結果として、子どもたちの攻撃性が減少したり、ポジティブな社会的行動が取り組み以前より増えていることが確認されています。同様のカリキュラムは中等教育で取り入れられた例もあり、そこでは生徒のみならず、教師に対してもポジティブな成果があらわれています。
人間の「共感能力」は、人間の集合体である「国家」においても観察することができます。アメリカにおいて気候変動に対する取り組みは盛んではありませんが、この問題は党だけでなく国境を超えた問題であり、関心を持つためにはより強い共感能力が必要となります。しかしアメリカ政府、少なくとも共和党の最優先事項は今現在「国防」であることが見てとれます。
つまり、アメリカはマズローの5段階欲求で示すところの「安全の欲求」を満たそうと必死なのです。逆に、たとえばスウェーデンなどの国家は多くのリソースを国防に割く必要がないため、環境保護など党派を超えた取り組みに目を向けやすくなります。
自分の経験のみを頼って相手の考えを推論して決めつけてしまうことは、共感とは呼べません。そうした「思い過ごし」をなくし、できるだけ広い範囲への共感を示すためには、まず私たちは「自分の欲求」を満たしていくことが大事なのかもしれません。