「見守り型」vs「ライド型」
『アルマゲドン』にせよ『アポロ13』にせよ、これまでの宇宙映画は、過酷なミッションを外側から「見守る」感覚がどうしても強くなります。「惑星の壮大な景色」や「優雅に舞う宇宙船」、それから「白熱する管制チーム」などは、やはり俯瞰した映像のほうが観ていて応援したくなりますよね。
しかし『ファースト・マン』に応援する余裕はありません。なぜなら、本作は強烈な「ライド感」を観客に要求する作りになっているからです。宇宙空間の優美な景色などはまったくなく、代わりに映されるのは、飛行士たちの顔のドアップや、機体の小さな窓越しから見える宇宙の暗闇ばかり…。
ところが、それによって映像の圧迫感や船内の閉塞感、飛行士の呼吸音、機体の振動がダイレクトに伝わってきます。これは過酷なミッションを外から見守る映画ではなく、ロケットに同乗して追体験する映画なのです。