「サブウェイ」での過酷なサバイバル生活
岩石中に掘られたトンネルを観察してみると、その様子はかなり複雑なラビリンス状態となっていました。
まず、幅数ミリメートル程の細いトンネルが見分けられます。これは、多毛類の小さなワームが掘ったもので、通路の途中にはすみかとなる秘密の小部屋がいくつも設けられていました。
こうした細長いトンネルは、岩石層のほとんどすべてに掘られており、当時のワームたちが地下生活をメインにしていたことが伺えます。しかし、彼らが海中ではなく、地下トンネルの中で暮らしていたのには理由があったのです。
それは、ワームの天敵である捕食者たちの存在でした。
化石を見てみると、細長いトンネルに垂直につながるように掘られた、人の指幅程の通路が見受けられました。これは、ワームを狙った大きな捕食者自身が掘ったもので、ターゲットが通るがかるまでそこで待ち伏せしていたと考えられています。
古代の海底生物の生活は、まさにトンネルに逃げ込んだものと、それを待ち受ける捕食者の戦いの日々だったのでしょう。
プラット氏は「こうした明晰な観察が可能だったのは、化石がほぼ完璧な保存状態で残されていたおかげ」だと指摘します。これは、当時のマッケンジー山脈付近の酸素濃度が低さが、返って化石の腐食を食い止めた結果なのです。
ただ、他に地中に残った死骸を食い荒らす生物がいなかったことや、粘土質に含まれるミネラル成分のおかげなど様々な憶測がなされています。プラット氏は現在、カンブリア紀のライフスタイルを詳細に解き明かすため、さらなる研究を進めています。
トンネルの中で古代生物が身を寄せ合って生活していると思うと少しほっこりしますが、その内情はかなりのサバイバル生活だったようです。