指で数を数える幼い子どもに、大人たちはあまりいい印象を持っていません。その行動はとても子どもっぽく見え、そのせいで頭の中で計算をしなくなってしまうからです。しかし、”Journal of Cognitive Psychology” で公開された6歳児を対象にした研究において、指で数を数える子どもは計算がとても早く正確であることがわかりました。
High working memory capacity favours the use of finger counting in six-year-old children
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/20445911.2017.1396990?journalCode=pecp21
さらに、指を使う必要があまりないと思われる作業記憶能力の高い子どもたちほど指を使って数を数える傾向にあり、この子たちはより効果的な指を使った数え方をしていました。
「この研究結果は、学校教育初期の段階で指を用いて計算演習をすることを推奨するものです」と語ったのは、ジェノバ大学とローザンヌ大学の研究者である、ジャスティン・デュポン=ボイムとキャサリン・テヴノです。
研究の対象者である84人の子供のボランティアは、スイス内のの6つの学校から集められました。これらの学校は、指で数えることを推奨してはいませんでしたが、禁止もしていませんでした。
彼らには簡単な一桁の数字の足し算が課題として与えられ、その様子はビデオに収められました。中には意地悪な問題もあり、合計が10を超えるものも含まれていました。その後研究者たちは、子どもが課題の間に指を使って数えていたのかどうか、そしてどのような方法で数えていたのかを調べました。
その結果、子どもたちのうち52人が指を使って計算をしていました。そして、指での数え上げと良いパフォーマンスの間には、計算の難易度にかかわらず相関関係があることが確認されました。また、この関係は、指での数え上げと高い作業記憶能力にも当てはまりました。つまり、指で数えて計算を行う子どもほど、作業記憶能力が高かったのです。
指で数えるにもかかわらず作業記憶能力が乏しかった子どもたちの問題点は、全部の指を使って、加える2つの数の両方を1から数え上げるという、より骨の折れる方法を使う傾向にあったことです。一方、作業記憶能力が高い子どもたちは、より効率的な方法を実践していました。例えば、8+3の場合、子どもたちは8から始めて、3本の指だけを使って足し算を終えました。
「うまくできない子に効果的な方法をしっかりと教えることは、彼らにとって非常に有益となるでしょう。また、繰り返し指を使うことで子どもたちが頭の中で数字を処理するようになり、結果としてより早く指の使用をやめることになるでしょう」と研究者は語ります。
また、最近の研究では5歳児の足し算能力を3年以上にわたって繰り返しテストし、そこにおいても同様の相関関係がみられました。子どもたちが8歳にいたるまでその関係が引き続きみられましたが、8歳を境にみられなくなりました。
確かに「指で数を数える」といった行動は幼くみえ、親が注意したくなる気持ちもわかります。しかしそれが、彼らが考えた上でとった最善の策であったと思うと、優しい気持ちで見守ってあげたくなりますね。
via: Research Digest: translated & text by Nazology staff